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253 バイト除去 、 2023年1月17日 (火) 19:40
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21世紀初期には欧米由来の食文化のグローバル化が進展し、宗教的理由から牛肉食がタブーとされている地域を除いては、牛肉食文化の世界的拡散が顕著である。特に商業畜産的要因から、現代の畜産・肥育・流通現場においては世界各地で細分化された名称が用いられる傾向がある。
 
== 宗教 ==
人間に身近で、印象的な角を持つ大型家畜である牛は、世界各地で信仰対象や動物に関連する様々な民俗・文化のテーマになってきた。
 
古代エジプト人は[[オシリス]]、[[ハトホル]]信仰を通して雄牛(ハピ、ギリシャ名ではアピス)を聖牛として崇め、第一王朝時代(紀元前2900年ごろ)には「ハピの走り」と呼ばれる行事が行われていた<ref name="Fagan">ブライアン・フェイガン『人類と家畜の世界史』東郷えりか訳 河出書房新社 2016年、ISBN 9784309253398 pp.120-125.</ref>。創造神[[プタハ]]の化身としてアピス牛信仰は古代エジプトに根を下ろし、ラムセス2世の時代にはアピス牛のための地下墳墓セラペウムが建設された<ref name="Fagan"/>。聖牛の特徴とされる全身が黒く、額に白い菱形の模様を持つウシが生まれると生涯神殿で手厚い世話を受け、死んだ時には国中が喪に服した。一方、普通のウシは食肉や労働力として利用されていたことが壁画などから分かっている。
 
主にインドで信仰されているヒンドゥー教では牛(特に[[コブウシ]])を神聖視している([[スイギュウ]]はそうではない)。このためインドは牛の飼育頭数は多いものの、牛肉食を忌避する国民が多い。インドでは従来も州により、牛肉の扱いを規制していた。2017年5月26日にはインド連邦政府が、食肉処理を目的とした家畜市場における牛の売買を禁止する法令を出した。これに対して、イスラム教徒や世俗主義者から「食事の選択権に対する侵害」として反対運動や訴訟が起き<ref>https://www.sankei.com/article/20170530-E73SSIK34RO5HARHJ6NWQQ5LKU/, インド政府、「牛の幸福のため」牛肉規制 家畜市場での肉牛売買禁止、一部の州やイスラム教徒は反発, 産経新聞ニュース, 2017年5月30日</ref>、インド最高裁判所は7月11日に法令差し止めを決めた<ref>https://www.sankei.com/article/20170711-GMXZBG6PGJPHTBSFA2RYF273SE/, 牛売買禁止令を差し止め インド最高裁 モディ政権に打撃, 産経新聞ニュース, 2017年7月11日</ref>。インドでは牛肉を売ったり、食べたりしたと思われた人が殺害される事件も起きている<ref>https://www.sankei.com/article/20170706-3OWBECV5DJNXBN3ZPO2QD6EZ4Q/, インドで「牛肉殺人」多発 モディ首相「誰も牛の名のもとに人を殺してはならない」, 産経新聞ニュース, 2017年7月6日</ref>。
 
日本でも牛(丑)は十二支の鳥獣に入っているほか、[[牛頭天王]]のような神や、[[牛鬼]]など妖怪のモチーフになっている。また、身近にいる巨大な哺乳類であることから、その種の中で大きい体格を持つ生き物の和名に用いられることがある(ウシエビ、ウシガエル、ウシアブなど)。
 
=== 紋章 ===
牛が紋章に描かれることは一般的である。
 
== 慣用句 ==
* 「牛にひかれて善光寺参り」 - 人に連れられて思いがけず行くこと。昔、老婆がさらしておいた布を牛が引っ掛けて[[善光寺]]に駆け込んだので、追いかけた老婆はそこが霊場であることを知り、以後たびたび参詣したという伝説から。
* 「牛の歩み(牛歩)」 - 進みの遅いことの譬え。
** 牛歩戦術
* 「牛の角を蜂が刺す」 - 牛の硬い角には[[ハチ|蜂]]の毒針も刺さらないことから、何とも感じないこと。
* 「牛の寝た程」 - 物の多くあるさまの形容。
* 「牛は牛づれ(馬は馬づれ)」 - 同じ仲間同士は一緒になり、釣り合いが取れるということ。
* 「牛は水を飲んで乳とし、蛇は水を飲んで毒とす」 - 同じものでも使い方によっては薬にも毒にもなることの譬え。
* 「牛も千里、馬も千里」 - 遅いか早いかの違いはあっても、行き着くところは同じということ。
* 「牛を売って牛にならず」 - 見通しを立てずに買い換え、損することの譬え。
* 「牛飲馬食」 - 牛や馬のように、たくさん飲み食いすること。「鯨飲馬食」ともいう。
* 「牛耳る(牛耳を執る)」 - 団体・集団の指導者となって指揮を執ること。
* 「商いは牛の涎」 - 細く長く垂れる牛の涎(よだれ)のように、商売は気長に辛抱強くこつこつ続けることがコツだという譬え。
* 「角を矯めて牛を殺す」- 些細な欠点を矯正しようとして却って全体を台無しにすること。
* 「九牛の一毛」 - 非常に多くの中の極めて少ないもの。
* 「暗がりから牛」 - 物の区別がはっきりしないこと。あるいはぐずぐずしていることの譬え。
* 「鶏口となるも牛後となるなかれ(牛の尾より鶏の口、鶏口牛後)」 - 大集団の下っ端になるより小集団でも指導者になれということ。人の下に甘んじるのを戒める、もしくは、小さなことで満足するを否とする言葉。
* 「牛なし、帽子ばっかり(all hat and no cattle)」ファッションでカウボーイの帽子をかぶっていても、牛は持っていない。見かけだおし、格好だけの人のこと。テキサス州の慣用表現。
=== 性別による名称 ===
日本においてウシが公然と食されるようになるのは[[明治時代]]である。[[文明開化]]によって欧米の文化が流入する中、欧米の重要な食文化である牛肉食もまた流れ込み、[[銀座]]において[[牛鍋]]屋が人気を博すなど、次第に牛肉食も市民権を得ていった。また、乳製品の利用・製造も復活した。
== 文化と宗教 文化 ==人間に身近で、印象的な角を持つ大型家畜である牛は、世界各地で信仰対象や動物に関連する様々な民俗・文化のテーマになってきた。 古代エジプト人は[[オシリス]]、[[ハトホル]]信仰を通して雄牛(ハピ、ギリシャ名ではアピス)を聖牛として崇め、第一王朝時代(紀元前2900年ごろ)には「ハピの走り」と呼ばれる行事が行われていた<ref name="Fagan">ブライアン・フェイガン『人類と家畜の世界史』東郷えりか訳 河出書房新社 2016年、ISBN 9784309253398 pp.120-125.</ref>。創造神[[プタハ]]の化身としてアピス牛信仰は古代エジプトに根を下ろし、ラムセス2世の時代にはアピス牛のための地下墳墓セラペウムが建設された<ref name="Fagan"/>。聖牛の特徴とされる全身が黒く、額に白い菱形の模様を持つウシが生まれると生涯神殿で手厚い世話を受け、死んだ時には国中が喪に服した。一方、普通のウシは食肉や労働力として利用されていたことが壁画などから分かっている。 主にインドで信仰されているヒンドゥー教では牛(特に[[コブウシ]])を神聖視している([[スイギュウ]]はそうではない)。このためインドは牛の飼育頭数は多いものの、牛肉食を忌避する国民が多い。インドでは従来も州により、牛肉の扱いを規制していた。2017年5月26日にはインド連邦政府が、食肉処理を目的とした家畜市場における牛の売買を禁止する法令を出した。これに対して、イスラム教徒や世俗主義者から「食事の選択権に対する侵害」として反対運動や訴訟が起き<ref>https://www.sankei.com/article/20170530-E73SSIK34RO5HARHJ6NWQQ5LKU/, インド政府、「牛の幸福のため」牛肉規制 家畜市場での肉牛売買禁止、一部の州やイスラム教徒は反発, 産経新聞ニュース, 2017年5月30日</ref>、インド最高裁判所は7月11日に法令差し止めを決めた<ref>https://www.sankei.com/article/20170711-GMXZBG6PGJPHTBSFA2RYF273SE/, 牛売買禁止令を差し止め インド最高裁 モディ政権に打撃, 産経新聞ニュース, 2017年7月11日</ref>。インドでは牛肉を売ったり、食べたりしたと思われた人が殺害される事件も起きている<ref>https://www.sankei.com/article/20170706-3OWBECV5DJNXBN3ZPO2QD6EZ4Q/, インドで「牛肉殺人」多発 モディ首相「誰も牛の名のもとに人を殺してはならない」, 産経新聞ニュース, 2017年7月6日</ref>。 日本でも牛(丑)は十二支の鳥獣に入っているほか、[[牛頭天王]]のような神や、[[牛鬼]]など妖怪のモチーフになっている。また、身近にいる巨大な哺乳類であることから、その種の中で大きい体格を持つ生き物の和名に用いられることがある(ウシエビ、ウシガエル、ウシアブなど)。 === 紋章 ===牛が紋章に描かれることは一般的である。 
== 環境問題 ==
ウシは反芻動物であり、反芻を繰り返すことにより、飼料を微生物が分解しメタンガスが発生する。これは地球温暖化の深刻な一因と言われており<ref>https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202111080000142.html, 世界に15億頭…牛のげっぷは地球温暖化の促進要因、世界が行う対策とは, 日刊スポーツ, 2021-11-08, 2021-11-08</ref>、アメリカではメタンの総発生量の26パーセントが牛のげっぷによるものである<ref name="geppu">http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/080600217/, 3NOPが牛のげっぷ中のメタンを3割減らす, ナショナルジオグラフィック, 2015-08-10</ref>。3-ニトロオキシプロパノール(3NOP)と呼ばれる成分を餌に混ぜるなどしてげっぷを少なくする研究が進んでいる。
 
== 慣用句 ==
* 「牛にひかれて善光寺参り」 - 人に連れられて思いがけず行くこと。昔、老婆がさらしておいた布を牛が引っ掛けて[[善光寺]]に駆け込んだので、追いかけた老婆はそこが霊場であることを知り、以後たびたび参詣したという伝説から。
* 「牛の歩み(牛歩)」 - 進みの遅いことの譬え。
** 牛歩戦術
* 「牛の角を蜂が刺す」 - 牛の硬い角には[[ハチ|蜂]]の毒針も刺さらないことから、何とも感じないこと。
* 「牛の寝た程」 - 物の多くあるさまの形容。
* 「牛は牛づれ(馬は馬づれ)」 - 同じ仲間同士は一緒になり、釣り合いが取れるということ。
* 「牛は水を飲んで乳とし、蛇は水を飲んで毒とす」 - 同じものでも使い方によっては薬にも毒にもなることの譬え。
* 「牛も千里、馬も千里」 - 遅いか早いかの違いはあっても、行き着くところは同じということ。
* 「牛を売って牛にならず」 - 見通しを立てずに買い換え、損することの譬え。
* 「牛飲馬食」 - 牛や馬のように、たくさん飲み食いすること。「鯨飲馬食」ともいう。
* 「牛耳る(牛耳を執る)」 - 団体・集団の指導者となって指揮を執ること。
* 「商いは牛の涎」 - 細く長く垂れる牛の涎(よだれ)のように、商売は気長に辛抱強くこつこつ続けることがコツだという譬え。
* 「角を矯めて牛を殺す」- 些細な欠点を矯正しようとして却って全体を台無しにすること。
* 「九牛の一毛」 - 非常に多くの中の極めて少ないもの。
* 「暗がりから牛」 - 物の区別がはっきりしないこと。あるいはぐずぐずしていることの譬え。
* 「鶏口となるも牛後となるなかれ(牛の尾より鶏の口、鶏口牛後)」 - 大集団の下っ端になるより小集団でも指導者になれということ。人の下に甘んじるのを戒める、もしくは、小さなことで満足するを否とする言葉。
* 「牛なし、帽子ばっかり(all hat and no cattle)」ファッションでカウボーイの帽子をかぶっていても、牛は持っていない。見かけだおし、格好だけの人のこと。テキサス州の慣用表現。
== 参考文献 ==
* Wikipedia:ウシ(最終閲覧日:23-01-17)
** ブリュノ・ロリウー, 2003-10, 中世ヨーロッパ食の生活史, 吉田春美, 原書房
* {{Cite book |和書 |author=* 市川健夫 |author2=, 市川健夫先生著作集刊行会 |title=, 牛馬と人の文化誌 |series=, 日本列島の風土と文化:市川健夫著作選集 |volume=3 |publisher=, volume3, 第一企画 |date=, 2010 |, isbn=:978-4-90-267615-0 |ref={{SfnRef|市川|2010}} }}**: 初出は『地理』第20巻第11号、1975年11月、「文化地理の指標としての家畜」。* {{Cite book |和書 |title=* 品種改良の世界史 家畜編 |editor=, 正田陽一 |publisher=, 悠書館 |date=, 2010-11 |author=, 松川正 |, isbn=:978-4-90-348740-3 |ref={{SfnRef|松川|2010}} }}
== 関連項目 ==
== 外部リンク ==
* [http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ushi/ 牛の博物館]
* {{ウェブアーカイブ |url=http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000023.html |title=, 丑のはなし - 神社本庁 |deadlink=yes |archivedate=, 2014-02-26 |archiveurl=, https://web.archive.org/web/20140226091944/http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000023.html}}
== 参照 ==

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