「美女と野獣」を編集中
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娘は初め豊かな暮らしを謳歌するが、自由のない暮らしに徐々に苦しみ始め、とうとう野獣に家族と再会したいと打ち明けてしまう。野獣は娘を非難するが、結局2か月だけ帰郷を許すことにした。 | 娘は初め豊かな暮らしを謳歌するが、自由のない暮らしに徐々に苦しみ始め、とうとう野獣に家族と再会したいと打ち明けてしまう。野獣は娘を非難するが、結局2か月だけ帰郷を許すことにした。 | ||
− | + | 娘は魔法によって家族の元に運ばれるが、そこは見知らぬ家だった。一家は父親が野獣に持たされていた財宝で、以前ほどではないにしろ余裕のある生活を取り戻し、街にある新たな家に引っ越していたのだった。突如現れた末娘に街の男たちは夢中になり、次々と求婚に訪れる。娘は出発を早めようとするが、父親らの強い引き留めにあい、結局2か月の期限を過ぎてしまう。 | |
娘は夢の中で、城の近くの洞穴の中で死にかけている光景を見る。更に夢の中の貴婦人が、あと一日でも帰りが遅れたら野獣は死ぬと警告する。恐ろしくなった娘はようやく城に戻る。野獣は必死の介助でどうにか意識を取り戻すが、野獣を失う不安に駆られたことで、娘は自分の中に野獣を愛する気持ちがあったことに気付かされる。二人は結婚を約束するが、野獣はベッドに入るやいなやすぐに眠りに落ちてしまう。翌朝娘が目を覚ますとベッドには野獣の姿はなく、代わりに夢で見たあの美青年がいたのだった。 | 娘は夢の中で、城の近くの洞穴の中で死にかけている光景を見る。更に夢の中の貴婦人が、あと一日でも帰りが遅れたら野獣は死ぬと警告する。恐ろしくなった娘はようやく城に戻る。野獣は必死の介助でどうにか意識を取り戻すが、野獣を失う不安に駆られたことで、娘は自分の中に野獣を愛する気持ちがあったことに気付かされる。二人は結婚を約束するが、野獣はベッドに入るやいなやすぐに眠りに落ちてしまう。翌朝娘が目を覚ますとベッドには野獣の姿はなく、代わりに夢で見たあの美青年がいたのだった。 | ||
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== 私的解説 == | == 私的解説 == | ||
− | + | 紋語りは大きく2つの要素からなっており、一つは「特定の娘(末娘)と野獣」の婚姻譚である。怪物退治の要素はない、あるいはほとんどない。娘は父親の失態の身代わりとなって野獣と結婚する<ref group="私注">このような展開は日本の「雉も鳴かずば」と対照的な展開であると思う。「雉も鳴かずば」では娘のために盗みを働いた父親自身が[[人柱]]にされる。「美女と野獣」は本来「雉も鳴かずば」型の神話だったものが、娘が生贄となる型に変更されたものなのではないだろうか、と管理人は疑問に思う。</ref>。野獣は娘の裏切りにあって死にかかるが、娘が妻となって助けることとなっている。'''娘を野獣から助ける英雄は登場しない'''。要は、「クピードーとプシュケー型」でも「エンリルとニンリル型」でも良いのだが、若い娘を「神の妻にする」と称して人身御供にすることの対して肯定的な物語といえる。死んだ野獣を新たに生まれ変わらせるために若い女性を生贄に捧げる、という趣旨は「エンリルとニンリル」の神話の方が理解しやすいかもしれない。 | |
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− | + | 妹に意地悪して(一応)罰せられる姉がいるのも「クピードーとプシュケー」的だが妹と野獣の婚姻を邪魔しようとしたから罰せられたのであって、動機は単なる'''妬み'''となっている。日本の「[[うりこひめとあまのじゃく]]」も、一連の騒動のあまのじゃく側の原因は妬みであるように思う。 | |
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− | + | 物語中に登場する「仙女」は、本来格の高い女神であって、野獣は、元はこの女神に対するタンムーズ的な生贄だったと思われる。よって、物語は'''上位の女神に対する生贄であった下位の男神を再生させるために、更に若い女性の生贄を捧げる'''、という重層化した人身御供の物語となっている。古いタンムーズ神話で、'''イナンナの身代わりとして冥界に落とされようとするドゥムジ(タンムーズ)を更に助けるために姉妹のゲシュティンアンナが冥界に下る'''というエピソードがある。要は野獣はドゥムジ(タンムーズ)であり、末娘はゲシュティンアンナである、というのが物語の骨格である。ただし、末娘には「父親の身代わり」という要素があるため、父親もまた上位の神々に対するドゥムジ的生贄であったものを再生させる(あるいは身代わりとなる)存在も末娘は兼ねる。末娘の地位は二重の意味で「ドゥムジの身代わりとなるゲシュティンアンナ」となっている。 | |
− | + | 娘にはヴィルヌーヴ版にあるように、多くの兄弟姉妹が存在した。古代中国には、女媧女神と伏羲の最初の子供が手足のない肉塊であったため、それをバラバラに切り刻んで空から投げとしたところ、各氏族が発生したという神話がある。おそらく「美女と野獣」の末娘は、各氏族の発生と繁栄のための生贄となった「肉塊」のことを指すのであろう。日本神話ではこの不具な初子のことを「蛭子」と呼ぶが、西欧ではこれが「初子」ではなく「末子」に変更されているようである。 | |
− | + | 野獣は金持ちであり「バラの花」の化身である。よって、植物神でもあり、樹木神でもある、といえる。折ってはいけない(殺してはいけない)樹木神を殺してしまったから、神を再生させるために娘の生贄が必要とされる、とそのような思想が崩れたもののように思われる。あるいは、これは'''寡婦殉死'''の思想が変化したものかもしれないと思う。印欧語族には、夫が亡くなると妻が殉死する、という伝統がところどころに垣間見える気がする。 | |
− | + | しかし、表面的には植物神でもある炎帝(あるいは川の神)に妻を生贄として与えて再生させよう、という趣旨の神話が変化したものと思われる。野獣は中国神話の[[炎帝神農|炎帝]]に相当し、クピードーもエンリルも[[炎帝神農|炎帝]]が変化したものといえよう。「仙女」は西王母あるいは(かつ)女媧が変化したものといえ、かつて母系が盛んであった時代には、古代中国でも女神の方が[[炎帝神農|炎帝]]よりも上位に来る存在だったことが示唆されるのではないだろうか。印欧語族の文化に影響を与えているスキタイの太母女神がエキドナという蛇女神で現されているので、類似性からいえば、「仙女」は西王母というよりは、蛇女神である女媧に近い存在なのかもしれない、と考える。 | |
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− | + | よって、「美女と野獣」は「女媧女神による初子殺しと人類の発生の神話」と「殺されたドゥムジ(饕餮)を再生させるために若い娘の生贄を捧げる」という神話が組み合わされて確立した物語といえると考える。 | |
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== 派生作品 == | == 派生作品 == | ||
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=== 非キリスト教的説話群 === | === 非キリスト教的説話群 === | ||
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* [http://bellis.sakura.ne.jp/k/tegalog.cgi?postid=138 風の神のおよめさん]:ネネツ族、風の神コトゥーラが「野獣」に相当する。 | * [http://bellis.sakura.ne.jp/k/tegalog.cgi?postid=138 風の神のおよめさん]:ネネツ族、風の神コトゥーラが「野獣」に相当する。 | ||
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== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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[[Category:ロマンス神話]] | [[Category:ロマンス神話]] | ||
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[[Category:禁忌]] | [[Category:禁忌]] | ||
+ | [[Category:変身譚]] | ||
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