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:一匹の状態では、ゾウやサイなど異種とも群れを作ろうとする<ref>YouTube、RhF7r5ayZvA、シロサイと仲良くなったヒツジ、ナショジオ、ナショナルジオグラフィック</ref>。
 
:一匹の状態では、ゾウやサイなど異種とも群れを作ろうとする<ref>YouTube、RhF7r5ayZvA、シロサイと仲良くなったヒツジ、ナショジオ、ナショナルジオグラフィック</ref>。
 
== 神話・民話など ==
 
=== 豊穣性の象徴としての羊 ===
 
神から授かった特別な羊は、金銀を体から出す、などとされることがあった。
 
 
* [http://bellis.sakura.ne.jp/k/tegalog.cgi?postid=123 つむじ風の贈物]:ベラルーシ共和国。風の神から授かった子羊は体から金銀を出した。
 
 
=== キリスト教での象徴性 ===
 
キリスト教、またその母体となっユダヤ教では、ヤハウェ(唯一神)やメシア(救世主)に導かれる信徒たちが、しばしば羊飼いに導かれる羊たちになぞらえられる。旧約聖書では、ヤハウェや王が羊飼いに、ユダヤの民が羊の群れにたとえられ(エレミヤ書・エゼキエル書・詩篇等)ている。
 
 
また、旧約聖書の時代、羊は神への捧げもの(生贄)としてささげられる動物の一つである。特に、出エジプト記12章では、「十の災い」の最後の災いを避けるために、モーセはイスラエル人の各家庭に小羊を用意させ、その血を家の入り口の柱と鴨居に塗り、その肉を焼いて食べるというたとえ話がある。のちに、出エジプトを記念する過越祭として記念されるようになる。
 
 
また、羊の肉はユダヤ教徒が食べることができる肉として規定されている。カシュルートを参照のこと。
 
 
新約聖書では、「ルカ福音書」(15章)や「マタイ福音書」(18章)に「迷子の羊と羊飼い」のたとえ話の節がある。愛情も慈悲も深い羊飼いは、たとえ100匹の羊の群れから1匹が迷いはぐれたときでも、そのはぐれた1匹を捜しに行くとしている。この箇所は隠喩となっており、はぐれた羊は、神から離れた者、神に従わない反抗者、罪を犯す者を表し、また羊飼いについては創造主である神を例えている。福音書では、どのような者であっても同じように愛し、気にかけ、大切に想う神の愛を示している。
 
 
「ヨハネ福音書」ではイエスが「私は善き羊飼いである」と語るが、イエス自身も「世の罪を取り除く神の小羊」と呼ばれる(1章29節)。
 
 
この「神の小羊」は、イエスが後に十字架上で刑死することにより、人間の罪を除くための神への犠牲となる意味があり、イエスが刑死したのも前述の過越祭の期間であったことから、パウロは第一コリント5章7節で、イエスは「過越の小羊として屠られた」と表現する(ミサ・ミサ曲)。
 
 
また、「ヨハネ黙示録」において、天上の光景のなかで啓示されるイエスの姿は「屠られたような」「七つの目と七つの角」を持つ小羊の姿である(5章他)。
 
 
=== イスラム教の犠牲祭 ===
 
イスラム教国においてはヒツジはもっとも重要な家畜の一つであり、特にサウジアラビアや湾岸諸国においてはハラールに適応するようオーストラリアなどから生きたまま羊を輸入し、自国にて屠畜し食肉とすることが行われる。また、ヒツジはイスラム教の祭日であるイード・アル=アドハー(犠牲祭)においてもっとも一般的な生贄である。この日はハッジの最終日に当たり、メッカ郊外のムズダリファにおいてヒツジや[[ラクダ]]、[[牛]]など50万頭にものぼる動物が生贄にささげられる<ref>「メッカ」p157 野町和嘉 岩波書店 2002年9月20日第1刷</ref>。メッカ以外の、巡礼に参加しなかったムスリムも動物を1頭捧げることが求められており、イスラム教諸国においてヒツジが買われ、神に捧げられる。捧げられた肉は自らの家庭で消費するほか、施しとして貧しい人々に分け与えられる。
 
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
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仏教の影響を色濃く受けた故に肉食があまり推奨されてこなかったことから食肉用はともかく、羊毛製品には全く需要がなかったわけではなく、貿易品としての羊の毛織物は人気は高いが高額であり、長らく一部の有力者や富裕層のみに珍重されていた。
 
仏教の影響を色濃く受けた故に肉食があまり推奨されてこなかったことから食肉用はともかく、羊毛製品には全く需要がなかったわけではなく、貿易品としての羊の毛織物は人気は高いが高額であり、長らく一部の有力者や富裕層のみに珍重されていた。
  
江戸時代、文化2年(1805年)に江戸幕府の長崎奉行の成瀬正定が羊を輸入し、唐人(中国人)の牧夫を使役して肥前浦上で飼育を試みたが、失敗。
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[[江戸時代]]、[[文化 (元号)|文化]]2年([[1805年]])に[[江戸幕府]]の[[長崎奉行]]の[[成瀬正定]]が羊を輸入し、[[唐人]](中国人)の[[牧夫]]を使役して[[肥前国|肥前]][[浦上]]で飼育を試みたが、失敗。
  
幕府の奥詰医師であった本草学者の渋江長伯は行動的な学者であったらしく、幕命により蝦夷地まで薬草採集に出向いたりしていた。長伯は幕府医師だけではなく、江戸郊外にあり幕府の薬草園であった広大な巣鴨薬園の総督を兼ねていたが、文化14年(1817年)から薬園内で綿羊を飼育し、羊毛から羅紗織の試作を行った。巣鴨薬園はゆえに当時「綿羊屋敷」と呼ばれていた。
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幕府の[[奥詰医師]]であった[[本草学者]]の[[渋江長伯]]は行動的な学者であったらしく、幕命により蝦夷地まで薬草採集に出向いたりしていた。長伯は幕府医師だけではなく、江戸郊外にあり幕府の[[薬草]]園であった広大な[[巣鴨薬園]]の総督を兼ねていたが、文化14年([[1817年]])から薬園内で綿羊を飼育し、羊毛から[[羅紗]]織の試作を行った。巣鴨薬園はゆえに当時「綿羊屋敷」と呼ばれていた。
  
明治期に入るとお雇い外国人によって様々な品種のヒツジが持ち込まれたが、冷涼な気候に適したヒツジは日本の湿潤な環境に馴染まず、多くの品種は定着しなかった。日本政府は牛馬の普及を重視したが、外国人ル・ジャンドルが軍用毛布のため羊毛の自給の必要性を説き、1875年(明治8年)に大久保利通によって下総に牧羊場が新設された。これが日本での本格的なヒツジの飼育の始まりである。
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明治期に入ると[[お雇い外国人]]によって様々な品種のヒツジが持ち込まれたが、冷涼な気候に適したヒツジは日本の湿潤な環境に馴染まず、多くの品種は定着しなかった。日本政府は牛馬の普及を重視したが、外国人ル・ジャンドルが軍用毛布のため羊毛の自給の必要性を説き、1875年(明治8年)に[[大久保利通]]によって下総に[[宮内庁下総御料牧場|牧羊場]]が新設された。これが日本での本格的なヒツジの飼育の始まりである。
  
 
民間では、1876年(明治9年)に蛇沼政恒が岩手県で政府から100余頭の羊と牧野を借りて始めたのが先駆で、以後、数百頭規模の牧場が東日本の各地に開かれた<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』16 - 18頁。</ref>。ただ、生産された羊毛を買い上げるのは軍用の千住製絨所に限られ、品質で劣る日本産羊毛の販売価格は低く、羊肉需要がないこともあって、経営的には成功しなかった<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』20 - 21頁。</ref>。1888年(明治21年)には政府の奨励政策が打ち切りになり、官営の下総牧羊場も閉鎖された<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』24頁。</ref>。
 
民間では、1876年(明治9年)に蛇沼政恒が岩手県で政府から100余頭の羊と牧野を借りて始めたのが先駆で、以後、数百頭規模の牧場が東日本の各地に開かれた<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』16 - 18頁。</ref>。ただ、生産された羊毛を買い上げるのは軍用の千住製絨所に限られ、品質で劣る日本産羊毛の販売価格は低く、羊肉需要がないこともあって、経営的には成功しなかった<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』20 - 21頁。</ref>。1888年(明治21年)には政府の奨励政策が打ち切りになり、官営の下総牧羊場も閉鎖された<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』24頁。</ref>。
  
しかし、国内の羊毛製品需要は軍需・民需ともに旺盛で、しだいに羊毛工業が発達した。戦前から戦後間もない時期までの日本にとって毛織物は重要な輸出品だったが、その原料はオーストラリアとニュージーランドなどからの輸入に頼っていた。一度は失敗を認めた政府にも、国産羊毛を振興したいという意見が根強くあり、1918年(大正7年)から「副業めん羊」を普及させた。農家が自家の農業副産物を餌にして1頭だけ羊を飼い、主に子供が世話をして家計の足しにするという方法である<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』31- 32頁。</ref>。副業めん羊は東日本の山間地の養蚕農家の間に広まった<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』32- 36頁。</ref>。
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しかし、国内の羊毛製品需要は軍需・民需ともに旺盛で、しだいに羊毛工業が発達した。戦前から戦後間もない時期までの日本にとって[[毛織物]]は重要な輸出品だったが、その原料は[[オーストラリア]]と[[ニュージーランド]]などからの輸入に頼っていた。一度は失敗を認めた政府にも、国産羊毛を振興したいという意見が根強くあり、[[1918年]](大正7年)から「副業めん羊」を普及させた。農家が自家の農業副産物を餌にして1頭だけ羊を飼い、主に子供が世話をして家計の足しにするという方法である<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』31- 32頁。</ref>。副業めん羊は東日本の山間地の養蚕農家の間に広まった<ref>小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、『日本畜産の経済構造』32- 36頁。</ref>。
  
1957年(昭和32年)には統計上で94万頭、実数ではおそらく100万頭を超える数が日本国内で飼育されるようになった。しかし、その後は海外から安価に羊肉及び羊毛が入ってきたことや、化学繊維が普及したため、国産羊毛の需要が急減し、24年後の1981年(昭和56年)になると、国内の羊の飼育数は、100分の1程度の約1万頭にまで激減した。その後、肉利用を目的とした羊の飼育が再び増加し、1991年(平成3年)には3万頭を超える数まで増加した。その8割はサフォーク種である<ref name="jlta.lin.gr.jp01_01"/>。
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1957年(昭和32年)には統計上で94万頭、実数ではおそらく100万頭を超える数が日本国内で飼育されるようになった。しかし、その後は海外から安価に羊肉及び羊毛が入ってきたことや、[[化学繊維]]が普及したため、国産羊毛の需要が急減し、24年後の1981年(昭和56年)になると、国内の羊の飼育数は、100分の1程度の約1万頭にまで激減した。その後、肉利用を目的とした羊の飼育が再び増加し、1991年(平成3年)には3万頭を超える数まで増加した。その8割は[[サフォーク種]]である<ref name="jlta.lin.gr.jp01_01"/>。
  
 
== 生産 ==
 
== 生産 ==
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{{main|en:Sheep farming}}
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[[ファイル:Ovejas en Patagonia - Argentina.jpg|thumb|アルゼンチン、パタゴニアでの牧羊]]
 
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|align=center colspan="2"|出典: FAO <ref name="Fao.org">http://faostat3.fao.org/home/index.html#VISUALIZE|title=FAO Brouse date production-Live animals-sheep, Fao.org, 2012-12-30</ref>
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|align=center colspan="2"|出典: [[FAO]] <ref name="Fao.org">{{cite web|url=http://faostat3.fao.org/home/index.html#VISUALIZE|title=FAO Brouse date production-Live animals-sheep|publisher=Fao.org |date= |accessdate=2012-12-30}}</ref>
 
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ヒツジは羊毛や肉(ラム、マトン)を目的として世界中で広く飼育され、2008年には全世界で10億頭を超えるヒツジが飼育されていた。世界で最もヒツジを多く飼育しているのは中国で、1億3000万頭以上に上る。飼育頭数は漸増傾向にあったが、2006年からは減少に転じている。2位はインドで、1992年から2010年までに飼育頭数が約1.5倍となり、現在も漸増傾向が続く。次いで飼育頭数が多いのはオーストラリアである。かつては長らく世界最大のヒツジ生産国であり、1992年には1億4800万頭以上のヒツジが飼育されていたが、飼育頭数は急激に減少しており、1996年には中国に抜かれて第2位となり、2010年にはインドにも抜かれて3位となった。2010年の飼育頭数は約6800万頭であり、1992年の半分以下にまで減少している。オーストラリアのヒツジはメリノ種が主であり、羊毛を主目的としていたが、近年では食肉種も盛んに飼育されるようになった。4位はイランであり、1992年の4600万頭から2010年の5400万頭と微増している。5位はスーダンであり、1992年から2010年までに飼育頭数は倍増した<ref name="Fao.org"/>。6位のニュージーランドは古くからのヒツジの大生産国であり、1834年にヒツジが本格導入されてからすぐに羊毛の大輸出国となり、さらに1882年に冷凍船が導入されてからは羊肉も輸出できるようになって、産業革命期にあったイギリスを主要市場として発展していった。ニュージーランドではオーストラリアとは違い、羊肉・羊毛兼用種が主に飼育されている<ref>「オセアニアを知る事典」平凡社 p240 1990年8月21日初版第1刷</ref>。
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ヒツジは羊毛や肉(ラム、マトン)を目的として世界中で広く飼育され、[[2008年]]には全世界で10億頭を超えるヒツジが飼育されていた。世界で最もヒツジを多く飼育しているのは[[中国]]で、1億3000万頭以上に上る。飼育頭数は漸増傾向にあったが、[[2006年]]からは減少に転じている。2位は[[インド]]で、[[1992年]]から[[2010年]]までに飼育頭数が約1.5倍となり、現在も漸増傾向が続く。次いで飼育頭数が多いのは[[オーストラリア]]である。かつては長らく世界最大のヒツジ生産国であり、1992年には1億4800万頭以上のヒツジが飼育されていたが、飼育頭数は急激に減少しており、[[1996年]]には中国に抜かれて第2位となり、2010年にはインドにも抜かれて3位となった。2010年の飼育頭数は約6800万頭であり、1992年の半分以下にまで減少している。オーストラリアのヒツジはメリノ種が主であり、羊毛を主目的としていたが、近年では食肉種も盛んに飼育されるようになった。4位は[[イラン]]であり、1992年の4600万頭から2010年の5400万頭と微増している。5位は[[スーダン]]であり、1992年から2010年までに飼育頭数は倍増した<ref name="Fao.org"/>。6位の[[ニュージーランド]]は古くからのヒツジの大生産国であり、[[1834年]]にヒツジが本格導入されてからすぐに羊毛の大輸出国となり、さらに[[1882年]]に[[冷凍船]]が導入されてからは羊肉も輸出できるようになって、[[産業革命]]期にあった[[イギリス]]を主要市場として発展していった。ニュージーランドではオーストラリアとは違い、羊肉・羊毛兼用種が主に飼育されている<ref>「オセアニアを知る事典」平凡社 p240 1990年8月21日初版第1刷</ref>。
  
日本のヒツジ飼育頭数は2010年に1万2000頭であり、世界では第158位である<ref>https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/sheep.html キッズ外務省:羊の頭数の多い国 日本国外務省 2012年12月30日閲覧</ref>。都道府県別では北海道での飼育数が飛び抜けて多く、他は秋田県、岩手県、福島県などの東北地方、栃木県や千葉県などの関東地方で飼育されている。東日本ではある程度飼育されているが、西日本ではほとんど羊の飼育は行われていない<ref>日本のめん羊事情, 公益社団法人畜産技術協会, 1991年12月, http://jlta.lin.gr.jp/publish/sheep/kiji/01_01.html, 2014-03-22</ref>。
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日本のヒツジ飼育頭数は2010年に1万2000頭であり、世界では第158位である<ref>https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/sheep.html キッズ外務省:羊の頭数の多い国 日本国外務省 2012年12月30日閲覧</ref>。[[都道府県]]別では[[北海道]]での飼育数が飛び抜けて多く、他は[[秋田県]]、[[岩手県]]、[[福島県]]などの[[東北地方]]、[[栃木県]]や[[千葉県]]などの[[関東地方]]で飼育されている。[[東日本]]ではある程度飼育されているが、[[西日本]]ではほとんど羊の飼育は行われていない<ref>{{cite web |title=日本のめん羊事情 |publisher=[[公益法人|公益社団法人]]畜産技術協会 |date=1991年12月 |url=http://jlta.lin.gr.jp/publish/sheep/kiji/01_01.html |accessdate=2014-03-22}}</ref>。
  
 
== 利用 ==
 
== 利用 ==
 
;羊肉
 
;羊肉
'''羊肉'''は広い地域で食用とされている。羊の年齢によって、生後1年未満をラム(lamb、子羊肉)・生後2年以上をマトン(mutton)と区別することもある。生後1年以上2年未満は、オセアニアでは「ホゲット」と区別して呼ばれているが、日本ではマトンに含まれる。
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[[ファイル:Thawed Lamb.JPG|thumb|200px|[[ジンギスカン (料理)|ジンギスカン]]用のラム肉]]
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'''[[羊肉]]'''は広い地域で食用とされている。羊の年齢によって、生後1年未満を[[ラム (子羊)|ラム]]({{lang|en|lamb}}、子羊肉)・生後2年以上を[[マトン]]({{lang|en|mutton}})と区別することもある。生後1年以上2年未満は、[[オセアニア]]では「ホゲット」と区別して呼ばれているが、日本ではマトンに含まれる。
  
日本国内では、毛を刈った後で潰したヒツジの大量の肉を消費する方法として新しく考案されたジンギスカンや、ラムしゃぶ、スペアリブの香草焼き、アイリッシュシチューなど特定の料理で使われることが多い。カルニチンを他の食肉よりも豊富に含むことから、体脂肪の消費を助ける食材とされている。
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日本国内では、毛を刈った後で潰したヒツジの大量の肉を消費する方法として新しく考案された[[ジンギスカン (料理)|ジンギスカン]]や、[[ラムしゃぶ]]、スペアリブの香草焼き、[[アイリッシュシチュー]]など特定の料理で使われることが多い。[[カルニチン]]を他の食肉よりも豊富に含むことから、体脂肪の消費を助ける食材とされている。
  
 
ラムには臭みが少なく、こちらは日本で近年人気が高まりつつある。羊肉特有の臭みは脂肪に集中するため、マトンの臭みを取り除くには、脂肪をそぎ落とすと良いと言われる。他には、「香りの強い香草と共に炒める」「牛乳に漬けておく」等の方法がある。
 
ラムには臭みが少なく、こちらは日本で近年人気が高まりつつある。羊肉特有の臭みは脂肪に集中するため、マトンの臭みを取り除くには、脂肪をそぎ落とすと良いと言われる。他には、「香りの強い香草と共に炒める」「牛乳に漬けておく」等の方法がある。
  
海外では、飼育が盛んなオーストラリア、ニュージーランドをはじめ、特にペルシャ湾岸諸国やギリシャ、イギリス、アイルランド、ウルグアイで盛んに消費される。湾岸諸国を除いては、いずれも羊が盛んに飼育される国家である。これらの国では、羊肉の年間一人当たり消費量が3kgから18kgにのぼる<ref name="nytimes.com">http://www.nytimes.com/2006/03/29/dining/29mutt.html Apple Jr., R.W. . "Much Ado About Mutton, but Not in These Parts". ニューヨーク・タイムズ、(2006年3月29日)2012年12月30日閲覧</ref>。湾岸諸国で消費が多いのは豚肉を避けるイスラム教が広く普及しているからであり、他の中東諸国でも羊肉の消費量は多い。マグリブやカリブ海、インドでも多く消費される。また、東アジアでも、モンゴル、中国西北部などでは、代表的な食肉となっており、さまざまな調理法が用いられている。ヨーロッパではラムが、中東や中央アジアではマトンが好まれる傾向にある<ref name="ReferenceA">『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店  2004年9月10日 第2版第1刷 p.666</ref>。
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海外では、飼育が盛んな[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]をはじめ、特に[[ペルシャ湾]]岸諸国や[[ギリシャ]]、[[イギリス]]、[[アイルランド]]、[[ウルグアイ]]で盛んに消費される。湾岸諸国を除いては、いずれも羊が盛んに飼育される国家である。これらの国では、羊肉の年間一人当たり消費量が3kgから18kgにのぼる<ref name="nytimes.com">http://www.nytimes.com/2006/03/29/dining/29mutt.html Apple Jr., R.W. . "Much Ado About Mutton, but Not in These Parts". [[ニューヨーク・タイムズ]]、(2006年3月29日)2012年12月30日閲覧</ref>。湾岸諸国で消費が多いのは[[豚肉]]を避ける[[イスラム教]]が広く普及しているからであり、他の[[中東]]諸国でも羊肉の消費量は多い。[[マグリブ]]や[[カリブ海]]、[[インド]]でも多く消費される。また、[[東アジア]]でも、[[モンゴル]]、[[中華人民共和国|中国]]西北部などでは、代表的な食肉となっており、さまざまな調理法が用いられている。ヨーロッパではラムが、中東や中央アジアではマトンが好まれる傾向にある<ref name="ReferenceA">『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店  2004年9月10日 第2版第1刷 p.666</ref>。
  
インドのマクドナルドには「マハラジャマック」と呼ばれるメニューがあり、これは牛を神聖な生き物とみなすヒンドゥー教の信徒のためにマトンを用いたハンバーガーのことである。
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インドの[[マクドナルド]]には「マハラジャマック」と呼ばれるメニューがあり、これは牛を神聖な生き物とみなす[[ヒンドゥー教]]の信徒のためにマトンを用いた[[ハンバーガー]]のことである。
  
一方、アメリカ合衆国においては羊肉の消費量はわずかである。アメリカ人の年間羊肉消費量は0.5kg以下で、牛肉(29kg)や豚肉(22&nbsp;kg)に比べてはるかに低い消費量となっている<ref name="nytimes.com"/>。これは、アメリカでは牛や豚など他の食肉が大量に生産できるうえに安く、さらにアメリカで食用にされるヒツジは羊毛用ヒツジの廃家畜が主であったため、食味などの品質で他の食肉に太刀打ちできなかったからである。さらに他食肉の価格下落に伴い、1960年代から1980年代にかけて羊肉消費量はさらに60%以上減少した<ref name="ReferenceA"/>。
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一方、[[アメリカ合衆国]]においては羊肉の消費量はわずかである。[[アメリカ人]]の年間羊肉消費量は0.5kg以下で、[[牛肉]](29kg)や[[豚肉]](22&nbsp;kg)に比べてはるかに低い消費量となっている<ref name="nytimes.com"/>。これは、アメリカでは牛や豚など他の食肉が大量に生産できるうえに安く、さらにアメリカで食用にされるヒツジは羊毛用ヒツジの廃家畜が主であったため、食味などの品質で他の食肉に太刀打ちできなかったからである。さらに他食肉の価格下落に伴い、[[1960年代]]から[[1980年代]]にかけて羊肉消費量はさらに60%以上減少した<ref name="ReferenceA"/>。
  
 
;羊乳
 
;羊乳
:ヒツジの乳は主にヨーグルトやチーズなどの加工用に使用される。生乳の飲用は牛に比べて生産効率が悪いためにほとんど行われない。特にチーズへの加工が多く、フランス]のロックフォール・チーズやイタリアのペコリーノ、ギリシャのフェタチーズなど羊乳を原料としたチーズも多い。
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[[ファイル:Feta Greece 2.jpg|thumb|right|200px|フェタチーズ]]
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:ヒツジの乳は主に[[ヨーグルト]]や[[チーズ]]などの加工用に使用される。生乳の飲用は牛に比べて生産効率が悪いためにほとんど行われない。特にチーズへの加工が多く、[[フランス]]の[[ロックフォール (チーズ)|ロックフォール・チーズ]]や[[イタリア]]の[[ペコリーノ]]、[[ギリシャ]]の[[フェタチーズ]]など羊乳を原料としたチーズも多い。
  
 
;羊毛
 
;羊毛
:羊の飼育上もっとも重要な利用対象はメリノ種などから取る緬毛(ウール)である。
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:羊の飼育上もっとも重要な利用対象はメリノ種などから取る緬毛([[ウール]])である。詳細は[[ウール|緬毛]]の項目を参照。
  
 
;羊皮紙
 
;羊皮紙
:羊皮紙はヒツジの皮を原料とするが、[[ヤギ]]や[[ウシ]]など、ヒツジ以外の生き物の皮が使われることも多かった。
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:[[羊皮紙]]はヒツジの皮を原料とするが、[[ヤギ]]や[[ウシ]]など、ヒツジ以外の生き物の皮が使われることも多かった。
:中近東や中世の西洋などでは、東洋から製紙の技術が伝播するまで、羊皮紙はパピルス、粘土板と共に、宗教関連の記録や重要な書類の作成に、長い間使用されていた。
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:[[中近東]]や[[中世]]の[[西洋]]などでは、[[東洋]]から製[[紙]]の技術が伝播するまで、羊皮紙は[[パピルス]]、[[粘土]]板と共に、宗教関連の記録や重要な書類の作成に、長い間使用されていた。
  
 
;ラノリン
 
;ラノリン
:羊毛の根元に付着しているワックスエステルを主成分とする油分を'''ウールオイル'''(ウールファット、Wool fat)または'''ウールグリース'''(Wool grease)という。これを精製したものを'''ラノリン'''といい化粧品、軟膏の原料にする。また、これとは別に肉から羊脂をとることができ、調理用などに使用される。
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{{Main|ラノリン}}
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:羊毛の根元に付着している[[ワックスエステル]]を主成分とする油分を'''ウールオイル'''(ウールファット、{{lang|en|[[w:Wool fat|Wool fat]]}})または'''ウールグリース'''({{lang|en|[[w:Wool grease|Wool grease]]}})という。これを精製したものを'''[[ラノリン]]'''といい化粧品、軟膏の原料にする。また、これとは別に肉から羊脂をとることができ、調理用などに使用される。
  
 
;革
 
;革
:ラムスキン、シープスキン、ムートンとして衣服に用いられる。
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:ラムスキン、シープスキン、[[ムートン]]として衣服に用いられる。
  
 
== 品種 ==
 
== 品種 ==
砂漠や山岳地帯など、さまざまな環境に適応した固有の種がある。家畜用のヒツジは、毛用種、肉用種、乳用種に大別されるが、代表種のメリノをはじめ、兼用の品種も多い。
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{{main|en:Category:Sheep breeds|en:List of sheep breeds}}
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[[砂漠]]や山岳地帯など、さまざまな環境に適応した固有の種がある。家畜用のヒツジは、毛用種、肉用種、乳用種に大別されるが、代表種のメリノをはじめ、兼用の品種も多い。
  
 
;原種
 
;原種
* アルガリ - 野生のヒツジで、ヒツジとしては最大の種。体高120センチ、体重100-180キロに達する。毛は褐色から赤褐色。角は渦巻き状で長い。アジアの高山地帯に分布する。マルコ・ポーロの『東方見聞録』でも紹介されている。家畜ヒツジの原種の一つと考えられている。
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* [[アルガリ]] - 野生のヒツジで、ヒツジとしては最大の種。体高120センチ、体重100-180キロに達する。毛は褐色から赤褐色。角は渦巻き状で長い。アジアの高山地帯に分布する。[[マルコ・ポーロ]]の『[[東方見聞録]]』でも紹介されている。家畜ヒツジの原種の一つと考えられている。
* ムフロン - 小型の野生のヒツジで、最初期に家畜化されたヒツジの原種の1つと考えられている。ヨーロッパ・ムフロン、アジア・ムフロン(レッド・ムフロン)が知られ、赤色から赤褐色、赤黄色の毛色をもつ。
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* [[ムフロン]] - 小型の野生のヒツジで、最初期に家畜化されたヒツジの原種の1つと考えられている。ヨーロッパ・ムフロン、アジア・ムフロン(レッド・ムフロン)が知られ、赤色から赤褐色、赤黄色の毛色をもつ。
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ファイル:Merino sheep.png|現代の代表品種メリノ
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ファイル:Take_ours%21.jpg|顔や四肢の黒いサフォーク
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ファイル:102 0198 Karakul3.jpg|カラクルの子
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ファイル:Muffelwild12.4.2008_007.jpg|野生種のムフロン
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=== ヨーロッパ ===
 
=== ヨーロッパ ===
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; コーカシアン
 
; コーカシアン
 
: ロシアや旧東欧諸国の主流品種。毛・肉ともに優れる。
 
: ロシアや旧東欧諸国の主流品種。毛・肉ともに優れる。
;  サフォーク
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[[サフォーク種|サフォーク]]
: 顔と四肢が黒い。イギリス・サフォーク州原産。戦後日本に導入され、主に肉用。国産のラム肉の多くは本種。原産地のイギリスでもラム肉の5割を占める。日本で最もポピュラーな品種で、近年は日本最多の登録数を占める。
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: 顔と四肢が黒い。[[イギリス]]・サフォーク州原産。戦後日本に導入され、主に肉用。国産のラム肉の多くは本種。原産地のイギリスでもラム肉の5割を占める。日本で最もポピュラーな品種で、近年は日本最多の登録数を占める。
 
; シャロレー
 
; シャロレー
 
: フランス原産。繁殖能力に優れ、雑種生産用として人気がある。ヨーロッパやアメリカで多く飼育され、ヨーロッパではシャロレーを父に持つ雑種はプレミア価格となる。
 
: フランス原産。繁殖能力に優れ、雑種生産用として人気がある。ヨーロッパやアメリカで多く飼育され、ヨーロッパではシャロレーを父に持つ雑種はプレミア価格となる。
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; テクセル
 
; テクセル
 
: オランダ原産の肉用種。飼育が容易で肉量が多く、50万頭が飼育されている。ヨーロッパ全域のほか、アメリカ、アフリカ、オセアニア、アジアの各大陸でも飼育される。
 
: オランダ原産の肉用種。飼育が容易で肉量が多く、50万頭が飼育されている。ヨーロッパ全域のほか、アメリカ、アフリカ、オセアニア、アジアの各大陸でも飼育される。
; メリノ
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; [[メリノ種|メリノ]]
: 最も有名な細毛品種。イベリア半島原産。原種は西アジア産で、地中海経由でイベリア半島に持ち込まれた。古代から中世にかけて、フェニキア人、ローマ人、ムーア人によって、中東の褐色のヒツジから白色のヒツジへと改良された。1300年代のカスティリヤで現在の原型が登場した。きわめて繊細な細毛が最大の特徴で、スペインの繊維産業の主力として国費によって飼育・改良され、近代までは国外への輸出が禁じられていた。現在は世界中に輸出されてスペインの独自性が喪失されたのとともに、化学繊維の普及によって飼育頭数は激減したが、それでもスペインで300万頭以上が飼育されている。18世紀にオーストラリアに持ち込まれて普及・改良されたオーストラリアン・メリノ種は1億3000万頭が飼育され、オーストラリア産の羊毛の7割を占める。顔や四肢は白く、メスは無角。毛肉兼用。
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: 最も有名な細毛品種。[[イベリア半島]]原産。原種は西アジア産で、地中海経由でイベリア半島に持ち込まれた。古代から中世にかけて、フェニキア人、ローマ人、ムーア人によって、中東の褐色のヒツジから白色のヒツジへと改良された。1300年代のカスティリヤで現在の原型が登場した。きわめて繊細な細毛が最大の特徴で、スペインの繊維産業の主力として国費によって飼育・改良され、近代までは国外への輸出が禁じられていた。現在は世界中に輸出されてスペインの独自性が喪失されたのとともに、化学繊維の普及によって飼育頭数は激減したが、それでもスペインで300万頭以上が飼育されている。18世紀にオーストラリアに持ち込まれて普及・改良されたオーストラリアン・メリノ種は1億3000万頭が飼育され、オーストラリア産の羊毛の7割を占める。顔や四肢は白く、メスは無角。毛肉兼用。
 
; ロムニー
 
; ロムニー
: イギリスケント州のロムニー原産。長毛の肉用種。顔や四肢は白い。ロムニー・マーシュはその名の通り沼沢地を好み、湿潤な気候に適することから日本にも多く導入された。改良種のニュージーランド・ロムニーはニュージーランドの飼育頭数の9割を占める代表種で約2700万頭飼育されている。
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: イギリス[[ケント州]]のロムニー原産。長毛の肉用種。顔や四肢は白い。ロムニー・マーシュはその名の通り沼沢地を好み、湿潤な気候に適することから日本にも多く導入された。改良種のニュージーランド・ロムニーはニュージーランドの飼育頭数の9割を占める代表種で約2700万頭飼育されている。
  
 
=== オセアニア ===
 
=== オセアニア ===
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=== アジア ===
 
=== アジア ===
 
; アワシ
 
; アワシ
: 中近東で5000年以上飼育されてきた品種で、南・西アジアでは現在も主流のヒツジ。毛はペルシア絨毯に、肉と乳は食用になる。顔は黒色、褐色、白色と多様。
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: 中近東で5000年以上飼育されてきた品種で、南・西アジアでは現在も主流のヒツジ。毛は[[ペルシア絨毯]]に、肉と乳は食用になる。顔は黒色、褐色、白色と多様。
; カラクル
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; [[カラクール|カラクル]]
 
: 中央アジアの高級品種。中央アジアの砂漠地帯の暑さと夜の寒さや乾燥に耐える。顔、四肢は黒い。世界の代表的な毛皮品種で、幼年時は黒色の毛で、成年になると灰褐色となる。子羊の皮はアストラカンと呼ばれる最高級品となる。品種名は原産地のウズベキスタンの村の名前に由来する。
 
: 中央アジアの高級品種。中央アジアの砂漠地帯の暑さと夜の寒さや乾燥に耐える。顔、四肢は黒い。世界の代表的な毛皮品種で、幼年時は黒色の毛で、成年になると灰褐色となる。子羊の皮はアストラカンと呼ばれる最高級品となる。品種名は原産地のウズベキスタンの村の名前に由来する。
 
; 蔵羊
 
; 蔵羊
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== 文化 ==
 
== 文化 ==
 
;文化
 
;文化
* 未(十二支)
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* [[未]]([[十二支]])
 
* [[おひつじ座]]
 
* [[おひつじ座]]
* 闘羊
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* [[闘羊]]
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=== キリスト教での象徴性 ===
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[[キリスト教]]、またその母体となった[[ユダヤ教]]では、ヤハウェ([[唯一神]])や[[メシア]](救世主)に導かれる信徒たちが、しばしば羊飼いに導かれる羊たちになぞらえられる。[[旧約聖書]]では、ヤハウェや王が羊飼いに、ユダヤの民が羊の群れにたとえられ([[エレミヤ書]]・[[エゼキエル書]]・[[詩篇]]等)ている。
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また、旧約聖書の時代、羊は神への捧げもの([[生贄]])としてささげられる動物の一つである。特に、[[出エジプト記]]12章では、「[[十の災い]]」の最後の災いを避けるために、[[モーセ]]はイスラエル人の各家庭に小羊を用意させ、その血を家の入り口の柱と鴨居に塗り、その肉を焼いて食べるという[[たとえ話]]がある。のちに、出エジプトを記念する[[過越]]祭として記念されるようになる。
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また、羊の肉はユダヤ教徒が食べることができる肉として規定されている。[[カシュルート]]を参照のこと。
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[[新約聖書]]では、「[[ルカ福音書]]」(15章)や「[[マタイ福音書]]」(18章)に「迷子の羊と羊飼い」のたとえ話の節がある。愛情も慈悲も深い羊飼いは、たとえ100匹の羊の群れから1匹が迷いはぐれたときでも、そのはぐれた1匹を捜しに行くとしている。この箇所は隠喩となっており、はぐれた羊は、神から離れた者、神に従わない反抗者、罪を犯す者を表し、また羊飼いについては創造主である神を例えている。福音書では、どのような者であっても同じように愛し、気にかけ、大切に想う神の愛を示している。
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「[[ヨハネ福音書]]」では、[[イエス・キリスト|イエス]]が「私は善き羊飼いである」と語るが、イエス自身も「世の罪を取り除く[[神の小羊]]」と呼ばれる(1章29節)。
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この「神の小羊」は、イエスが後に十字架上で刑死することにより、人間の罪を除くための神への犠牲となる意味があり、イエスが刑死したのも前述の過越祭の期間であったことから、[[パウロ]]は[[コリントの信徒への手紙一|第一コリント]]5章7節で、イエスは「過越の小羊として屠られた」と表現する([[ミサ]]・[[ミサ曲]])。
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また、「[[ヨハネ黙示録]]」において、天上の光景のなかで啓示されるイエスの姿は「屠られたような」「七つの目と七つの角」を持つ小羊の姿である(5章他)。
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=== イスラム教の犠牲祭 ===
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イスラム教国においてはヒツジはもっとも重要な家畜の一つであり、特に[[サウジアラビア]]や湾岸諸国においては[[ハラール]]に適応するようオーストラリアなどから生きたまま羊を輸入し、自国にて屠畜し食肉とすることが行われる。また、ヒツジはイスラム教の祭日である[[イード・アル=アドハー]](犠牲祭)においてもっとも一般的な[[生贄]]である。この日は[[ハッジ]]の最終日に当たり、[[メッカ]]郊外のムズダリファにおいてヒツジや[[ラクダ]]、[[牛]]など50万頭にものぼる動物が生贄にささげられる<ref>「メッカ」p157 野町和嘉 岩波書店 2002年9月20日第1刷</ref>。メッカ以外の、[[巡礼]]に参加しなかった[[ムスリム]]も動物を1頭捧げることが求められており、イスラム教諸国においてヒツジが買われ、神に捧げられる。捧げられた肉は自らの家庭で消費するほか、施しとして貧しい人々に分け与えられる。
  
 
=== シープドッグ ===
 
=== シープドッグ ===
犬種にShetland Sheepdog''(シェットランド・シープドッグ)の様に''sheepdog''と付くものがあるが、これは「ヒツジに似た犬」ではなく、'''牧羊犬'''に適した犬種であることを示している(シェパード(Shepherd)も同様)。これらは、英語圏を始めとする欧州地域でのヒツジが比較的身近な家畜である顕著な例でもある。
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犬種に {{lang|en|''[[:en:Shetland Sheepdog|Shetland Sheepdog]]''}}([[シェットランド・シープドッグ]])の様に {{lang|en|''sheepdog''}} と付くものがあるが、これは「ヒツジに似た犬」ではなく、'''[[牧羊犬]]'''に適した犬種であることを示している([[シェパード]] {{lang|en|Shepherd}} も同様)。これらは、[[英語圏]]を始めとする欧州地域でのヒツジが比較的身近な家畜である顕著な例でもある。
  
 
=== 言葉 ===
 
=== 言葉 ===
* 鳴き声を日本語で書き表すと「メー」。漢字では「咩(万葉仮名:め、呉音:ミ、漢音:ビ、現代中国語:miē)」。英語では「バー」。
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* 鳴き声を[[日本語]]で書き表すと「メー」。[[漢字]]では「咩([[万葉仮名]]:め、[[呉音]]:ミ、[[漢音]]:ビ、現代[[中国語]]:{{lang|zh-latn|miē}})」。[[英語]]では「バー」。
* 英語圏に、羊を数えることで安眠が得られるという俗説がある。これは、「One sheep, two sheep…」と唱えることでよく似た発音の「sleep」(眠る)と脳に命じる効果があること、また「sheep」という言葉が安眠を促す腹式呼吸を誘う発音であることに由来する、といわれる<ref>[https://asajo.jp/excerpt/3178 Asa-Jo]「羊が一匹、羊が二匹…」日本人が羊を数えても眠れない理由が判明した!</ref>。なお、英単語「sheep」は、単数形・複数形が同形である。
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* 英語圏に、羊を数えることで安眠が得られるという俗説がある。これは、「{{lang|en|One sheep, two sheep}}…」と唱えることでよく似た発音の「{{lang|en|sleep}}」(眠る)と脳に命じる効果があること、また「{{lang|en|sheep}}」という言葉が安眠を促す腹式呼吸を誘う発音であることに由来する、といわれる<ref>[https://asajo.jp/excerpt/3178 Asa-Jo]「羊が一匹、羊が二匹…」日本人が羊を数えても眠れない理由が判明した!</ref>。なお、英単語「{{lang|en|sheep}}」は、単数形・複数形が同形である。
 
* 黒羊(ブラックシープ)は、白い羊の中で目立つことや、羊毛を染められないため価値が低いとされたことから、厄介者という消極的な意味や型にはまらない変わり者など肯定的な用法として要いられる。同義語:白いカラス(ロシア)。
 
* 黒羊(ブラックシープ)は、白い羊の中で目立つことや、羊毛を染められないため価値が低いとされたことから、厄介者という消極的な意味や型にはまらない変わり者など肯定的な用法として要いられる。同義語:白いカラス(ロシア)。
: 黒い羊 (慣用句)
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: {{Main|黒い羊 (慣用句)}}
* Schafskälte - ドイツ語で「羊が寒がる」という意味で、アルプスの6月で急に冷え込む気象現象のこと。
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* {{ill2|Schafskälte|de|Schafskälte}} - ドイツ語で「羊が寒がる」という意味で、アルプスの6月で急に冷え込む気象現象のこと。
* Bellwether - 鈴が首につけられた去勢された牡羊である。去勢された牡羊(ウェザー)は羊飼いに従順になり、羊飼いの訓練を経て、羊の群れを率いるリーダーとしての役割を与えられる<ref>トレイルズ 「道」と歩くことの哲学 著者:ROBERT MOOR</ref>。このことから政治リーダーや株式の指標銘柄、先例裁判、トレンドを作る人間、環境の変化を敏感に感知する動物などを呼び表すのに使われる<ref>[https://www.encyclopedia.com/environment/encyclopedias-almanacs-transcripts-and-maps/bellwether-species Bellwether species] 掲載サイト:Encyclopedia.com</ref>。
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* {{ill2|ベルウェザー|en|Bellwether}} - 鈴が首につけられた去勢された牡羊である。去勢された牡羊(ウェザー)は羊飼いに従順になり、羊飼いの訓練を経て、羊の群れを率いるリーダーとしての役割を与えられる<ref>トレイルズ 「道」と歩くことの哲学 著者:ROBERT MOOR</ref>。このことから政治リーダーや株式の[[指標銘柄]]、先例裁判、トレンドを作る人間、環境の変化を敏感に感知する動物などを呼び表すのに使われる<ref>[https://www.encyclopedia.com/environment/encyclopedias-almanacs-transcripts-and-maps/bellwether-species Bellwether species] 掲載サイト:[[Encyclopedia.com]]</ref>。
  
 
=== その他 ===
 
=== その他 ===
* 怒った雄羊の突撃には相当な威力がある。ここから転じてローマ軍で用いられた破城槌の先端には、鉄や青銅で出来た雄羊の頭の像が取り付けられた。
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* 怒った雄羊の突撃には相当な威力がある。ここから転じて[[ローマ軍]]で用いられた[[破城槌]]の先端には、鉄や青銅で出来た雄羊の頭の像が取り付けられた。
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;オークション
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*[[2009年]]、「デブロンベール・パーフェクション」という名の羊が23万ポンド(約3200万円)で落札された。
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*[[2020年]][[8月]]に[[スコットランド]]の[[ラナーク]]で行われたオークションで、「ダブル・ダイヤモンド」という名のテクセル種の子羊が35万ギニー(イギリスの家畜の売買では、通貨の単位として伝統的に[[ギニー]]が使われる)(約5200万円)で落札された。<ref>{{Cite web|url=https://www.cnn.co.jp/fringe/35158925.html|title=羊一頭、史上最高額の5200万円で落札 英国|accessdate=2020-9-3|publisher=CNN}}</ref>
  
 
== 参考文献 ==
 
== 参考文献 ==
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%84%E3%82%B8 ヒツジ](最終閲覧日:23-01-10)
+
* [[秋篠宮文仁親王|秋篠宮文仁]]『日本の家畜・家禽』、学習研究社、2009年、ISBN 978-4-05-403506-5
** 秋篠宮文仁『日本の家畜・家禽』、学習研究社、2009年、ISBN 978-4-05-403506-5
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* 賀来孝代「未 ヒツジ」、設楽博己編『十二支になった動物たちの考古学』、新泉社、2015年
** 賀来孝代「未 ヒツジ」、設楽博己編『十二支になった動物たちの考古学』、新泉社、2015年
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* 小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、栗原藤七郎・編『日本畜産の経済構造』、東洋経済新報社、1962年。
** 小林忠太郎「民営牧羊経営の成立と崩壊」、栗原藤七郎・編『日本畜産の経済構造』、東洋経済新報社、1962年。
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* 佐々倉実・佐々倉裕美『ひつじにあいたい』、山と渓谷社、2009、ISBN 978-4-635-23025-4
** 佐々倉実・佐々倉裕美『ひつじにあいたい』、山と渓谷社、2009、ISBN 978-4-635-23025-4
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* 下総御料牧場『下総御料牧場概観』、1903年。
** 下総御料牧場『下総御料牧場概観』、1903年。
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* 正田陽一『世界家畜品種事典』、東洋書林、2006年、ISBN 4-88721-697-1
** 正田陽一『世界家畜品種事典』、東洋書林、2006年、ISBN 4-88721-697-1
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* 正田陽一『品種改良の世界史・家畜編』、悠書館、2010年、ISBN 978-4-903487-40-3
** 正田陽一『品種改良の世界史・家畜編』、悠書館、2010年、ISBN 978-4-903487-40-3
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* 百瀬正香『羊の博物誌』、日本ヴォーグ社、2000年、ISBN 978-452-903427-2
** 百瀬正香『羊の博物誌』、日本ヴォーグ社、2000年、ISBN 978-452-903427-2
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== 関連項目 ==
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;料理
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* [[モモ (料理)]]
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* [[ガンファン]]:中央アジアで食される「羊丼」
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* [[クッベ・ナーイエ]] 東アラブで食されるタルタルステーキ様の料理。
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== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
 
* [http://jlta.lin.gr.jp/sheepandgoat/index.html めん羊・山羊] - 社団法人畜産技術協会
 
* [http://jlta.lin.gr.jp/sheepandgoat/index.html めん羊・山羊] - 社団法人畜産技術協会
  
== 注釈 ==
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== 参照 ==
<references group="注釈"/>
 
  
== 参照 ==
 
  
 
{{DEFAULTSORT:ひつし}}
 
{{DEFAULTSORT:ひつし}}
 
[[Category:羊|*]]
 
[[Category:羊|*]]
 
[[Category:東欧神話]]
 
[[Category:東欧神話]]

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