冥界の門を到着すると、イナンナは門番である[[ネティ]]に冥界の門を開くように命じ<ref>来訪の理由を問われ、エレシュキガルの夫[[グガランナ|グアガルアンナ]]の葬儀に出席することを口実にしたともされる(岡田・小林、163頁)。</ref>、ネティはエレシュキガルの元に承諾を得に行った。エレシュキガルはイナンナの来訪に怒ったが、イナンナが冥界の七つの門の一つを通過するたびに身につけた飾りの一つをはぎ取ることを条件に通過を許した。イナンナは門を通るごとに身につけたものを取り上げられ、最後の門をくぐるときに全裸になった。彼女はエレシュキガルの宮殿に連れて行かれて、七柱のアヌンナの神々に冥界へ下りた罪を裁かれた。イナンナは死刑判決を受け、エレシュキガルが「死の眼差し」を向けると倒れて死んでしまった。彼女の死体は宮殿の壁に鉤で吊るされた<ref>矢島。52 - 56頁</ref><ref>岡田・小林、164。</ref>。
三日三晩が過ぎ<ref>異聞では七年七ヶ月七日とも七年ともいわれる(岡田・小林、167頁)。</ref>、ニンシュブルは最初にエンリル、次にナンナに経緯を伝えて助けを求めたが、彼らは助力を拒んだ。しかしエンキは自分の爪の垢からクルガルラ(泣き女)とガラトゥル(哀歌を歌う神官)という者を造り、それぞれに「命の食べ物」と「命の水」を持って、先ずエレシュキガルの下へ赴き、病んでいる彼女を癒すよう、そしてその礼として彼女が与えようとする川の水と大麦は受け取らずにイナンナの死体を貰い受け、死体に「命の食べ物」と「命の水」を振りかけるように命じた。クルガルラとガラトゥルがエンキに命じられた通りにするとイナンナは起き上がった。しかし冥界の神々はイナンナが地上に戻るには身代わりに誰かを冥界に送らなければならないという条件をつけ、ガルラという精霊たちが彼女に付いて行った、ニンシュブルは最初にエンリル、次にナンナに経緯を伝えて助けを求めたが、彼らは助力を拒んだ。しかしエンキは自分の爪の垢からクルガルラ(泣き女)とガラトゥル(哀歌を歌う神官)という者を造り、それぞれに「命の食べ物」と「'''命の水'''」を持って、先ずエレシュキガルの下へ赴き、病んでいる彼女を癒すよう、そしてその礼として彼女が与えようとする川の水と大麦は受け取らずにイナンナの死体を貰い受け、死体に「命の食べ物」と「命の水」を振りかけるように命じた。クルガルラとガラトゥルがエンキに命じられた通りにするとイナンナは起き上がった。しかし冥界の神々はイナンナが地上に戻るには身代わりに誰かを冥界に送らなければならないという条件をつけ、ガルラという精霊たちが彼女に付いて行った<ref>矢島、56 - 58頁</ref><ref>岡田・小林、164 - 165頁、但し、こちらではエレシュキガルの病を癒すこと、その礼としてイナンナの死体を求めることについての記載は無い。</ref>。
まず、イナンナはニンシュブルに会った。ガルラたちは彼女を連れて行こうとしたが、イナンナは彼女が自分のために手を尽くしたことと喪に服してくれたことを理由に押しとどめた。次にシャラ神、さらにラタラク神に会うが、彼らも喪に服し、イナンナが生還したことを地に伏して喜んだため、彼らが自身に仕える者であることを理由に連れて行くことを許さなかった。しかし夫の神ドゥムジが喪にも服さず着飾っていたため、イナンナは怒り、彼を自分の身代わりに連れて行くように命じた。ドゥムジはイナンナの兄[[ウトゥ]]に救いを求め、憐れんだウトゥは彼の姿を蛇に変えた。ドゥムジは姉の[[ゲシュティンアンナ]]の下へ逃げ込んだが、最後には羊小屋にいるところを見つかり、地下の世界へと連れ去られた。その後、彼と姉が半年ずつ交代で冥界に下ることになった<ref>矢島、58 - 62頁。</ref><ref>岡田・小林、165 -166頁。</ref>。
== 王権を授与する神としてのイナンナ ==
イナンナ神は外敵を排撃する神としてイメージされており、[[統一国家]]形成期には王権を授与する神としてとらえられている。なお、それに先だつ領域国家の時代、および後続する統一国家確立期においては王権を授与する神はイナンナ神は外敵を排撃する神としてイメージされており、統一国家形成期には王権を授与する神としてとらえられている。なお、それに先だつ領域国家の時代、および後続する統一国家確立期においては王権を授与する神は[[エンリル]]([[シュメール語]]: {{cuneiform|[[:wikt:𒀭|𒀭]][[(シュメール語:wikt:𒂗|𒂗]][[:wikt:𒇸|𒇸]]}})であり、そこには交代がみられる𒀭𒂗𒇸)であり、そこには交代がみられる<ref>前田(2003)p.21</ref>。
=== ウルクの大杯 ===
高さ1m強、高さ1m強、石灰岩で造られた大杯。ドイツ隊によって発見され、[[石灰岩]]で造られた大杯。ドイツ隊によって発見され、[[イラク]]博物館に展示されていたイラク博物館に展示されていた<ref>前川和也『図説メソポタミア文明』p.6</ref>。最上段には都市の支配者が最高神イナンナに献納品を携え訪れている図像が描かれ、最下段には[[チグリス]]と[[ユーフラテス]]が、その上に主要作物、羊のペア、さらに逆方向を向く裸の男たちが描かれている<ref>前川和也『図説メソポタミア文明』p.8</ref>。図像はイナンナと[[ドゥムジ]]の「[[聖婚]]」を示し、当時の人々が[[豊穣]]を願う性的合一の[[儀式]]を国家祭儀にまで高めていた様子を教えているの「聖婚」を示し、当時の人々が豊穣を願う性的合一の儀式を国家祭儀にまで高めていた様子を教えている<ref>前川和也『図説メソポタミア文明』p.9</ref>。
== 参考文献 ==