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ページの作成:「'''白沢'''（はくたく、Baízé）は、中国に伝わる瑞獣（神獣・聖獣）の一種。'''人間の言葉を解し万物の知識に精通する'''とさ…」
'''白沢'''（はくたく、Baízé）は、中国に伝わる瑞獣（神獣・聖獣）の一種。'''人間の言葉を解し万物の知識に精通する'''とされる。その姿を描いた図画は魔除け（厄除け）として用いられる。<!-- 「澤」と「沢」は同字の旧字体と新字体（当用漢字体）であり、新字体を使う現代日本語では「白沢」を使うのが本則である<ref>『広辞苑』「はくたく【白沢】」</ref>が、部分的に旧字体を使う書籍などで（新字体の文章中であっても） -->現代の日本においては旧字体で「'''白澤'''」と表記されることもある。
== 生態 ==
中国明代の百科事典『三才図会』によると、東望山（江蘇省徐州市銅山区）に白沢という獣が住んでいた。白沢は人間の言葉を操り、そのときの為政者が有徳であれば姿をみせたと言う<ref name=":0">和書, https://archive.org/stream/02098359.cn#page/n10/mode/2up, 三才図会, 巻92・鳥獣4・白澤, 東望山有沢獣者、一名曰白澤、能言語。王者有徳、明照幽遠、則至。昔黄帝巡狩至東海、此獣有言為時除害。</ref><ref name="yuanjian_leihan"/>
<ref group="注">『淵鑑類函』</ref><ref name="yuanjian_leihan"/>原田（1914, p=414）や『佩文韻府』ではこれを『山海経』からの引用とするが、現存する『山海経』にこのような文はない<ref>西岡, 1998a; 西岡, 1998b, p7。松田稔（國學院大學教授。『山海経』専門）に拠る。</ref>。そのような生態から、白沢は[[麒麟]]や[[鳳凰]]などと同類の瑞獣とみなされる。
== 姿 ==
その姿を描いた図画が『三才図会』や日本の『[[和漢三才図会]]』にも掲載され描かれているが、その姿は白い[[獅子]]とされている<ref name=":0" />。
一方で、[[鳥山石燕]]の『[[今昔百鬼拾遺]]』に描かれた白沢は、頭には[[牛]]のような二本[[角]]があり、下顎には[[山羊]]のような髭を蓄え、[[眼]]が額にもう一つあり、更に胴体の側面に眼が三つあり、もう片方の側面にも三つあるとすれば合計で九つの眼をもっている。
白沢が三眼以上の眼を持つ姿は石燕以降と推測され、それより前には三眼以上の眼は確認できない{{要出典|date=2020年7月}}。たとえば『怪奇鳥獣図巻』（出版は[[江戸時代]]だがより古い中国の書物を参考に描かれた可能性が高い）の白沢は眼が二つである。この白沢は、麒麟の体躯を頑丈にしたような姿で描かれている<ref>[[伊藤清司]] 監修・解説『怪奇鳥獣図巻』2001 [[工作舎]]、底本: 作者・年代不詳（江戸時代）.</ref>。
== 獅と白沢 ==
『[[本草綱目]]』は、獅（[[ライオン]]）の別名を「白沢」とする説について言及している<ref>{{cite wikisource|和書|wslink=本草綱目/獸之二#獅|wslanguage=zh|title=本草綱目 獣之二 獅}}</ref>（その記述があるのは『[[説文解字]]』だとされているが確認できない<ref>[http://ctext.org/shuo-wen-jie-zi/zh?searchu=%E7%99%BD%E6%BE%A4 説文解字を「白澤」で検索]</ref>）。ただし『[[瑞応図]]』を元に、獅と白沢は異なると結論づけている。
== 白沢にまつわる文化 ==
=== 白沢図 ===
<!-- 医学などの祖とされる中国の伝説上の[[三皇五帝]]の一人である[[黄帝]]が、東方巡行した折に白沢に遭遇したとされる。-->伝説によれば、中国最古の[[王]]、[[黄帝]]が[[東シナ海|東海]]地方を巡行したおりに、[[恒山]]に登ったあとに訪れた海辺で白沢に出会った{{Refn|name="kenen"|『雲笈七籤』巻100引王瓘『軒轅本紀』<ref name="yunji qiqian"/><ref name="ito-kaiki"/>。}}{{Refn|name="huangdi_neichuan"|『淵鑑類函』引『黄帝内傳』<ref name="yuanjian_leihan"/>{{sfn|原田|1914|p=414}}。}}。その時黄帝に1万1520種に及ぶ天下の妖異鬼神の知識について語り世の害を除くため忠言した<ref name="kenen" /><ref name="huangdi_neichuan" />。黄帝はそれらの知識を部下に書き取らせた。こうしてできた書物を『白沢図』という。ここでいう妖異鬼神とは人に災いをもたらす病魔や[[天災]]の象徴であり、『白沢図』にはそれらへの対処法も記述されており、単なる図録ではなく今でいうところの防災[[マニュアル]]のようなものである。
伝説の真偽がどうであれ、『白沢図』という書物は古代中国に実際に存在した。しかしながら、[[北宋]]代に[[逸書|散逸]]してしまった{{Sfn|佐々木|2017}}。ただし、[[逸文]]がいくつか残っており<ref name=":1" />、さらに20世紀初頭、[[莫高窟]]から出土した[[敦煌文献]]のなかには『白沢図』と関連する図画（{{仮リンク|白沢精怪図|zh|白澤精恠圖|label=}}）が見つかっている。それらを参考材料として、現代の学者によって『白沢図』の復元が試みられている{{Sfn|佐々木|2017}}。
以上のような『白沢図』とは別に、[[唐代]]以降の[[中国の民俗宗教]]では、白沢そのものの図画が厄よけ（[[辟邪絵]]）になるとして信仰された<ref>{{Cite web|title=Ⅳ 白沢からクタベへ|url=https://www.kyoto-su.ac.jp/facilities/musubiwaza/gallery/202103_tenji00-4.html|website=京都産業大学|accessdate=2021-04-24|language=ja|author=笹方政紀}}</ref>{{Sfn|佐々木|2017|loc=第3章}}。日本でも江戸時代には、[[旅行ガイドブック]]に描いて道中のお守りとして身につけたり（[[旅行ガイドブック#日本の旅行ガイドブックの歴史|八隅蘆菴『旅行用心集』]]など<ref>{{Cite web|title=おうちでミュージアム「江戸刷リ物品定メ 二代目金沢文庫長の秘策」後編|url=https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ie2/tours/diary/20200417-bunko.html|website=[[神奈川県]]|accessdate=2020-07-13|language=ja|publisher=|date=2020年4月17日}}</ref>）、病魔よけに枕元においたりした。
=== 為政者と白沢 ===
白沢は徳の高い為政者の治世に姿を現すとされることと、病魔よけになると信じられていることから、為政者は身近に白沢に関するものを置いた。中国の[[皇帝]]は護衛隊の先頭に「白沢旗」を掲げたといわれる。
また、[[日光東照宮]][[拝殿]]の[[征夷大将軍|将軍]]着座の間の杉戸に白沢の絵が描かれている。
== 白沢が出てくる歴史資料 ==
=== 日本 ===
* 『[[大覚禅師]]語録』3巻:「忌。有遭狐魅者。良久。家無白澤図。妖怪自消除」（魔除けのために『白沢図』が流行していることを言う）
* 『和漢三才図会』：江戸中期の[[寺島良安]]が編纂した図入りの[[百科事典]]。
* 『今昔百鬼拾遺』：江戸中期の鳥山石燕が描いた[[妖怪]]の図録
* 『白沢考』[[屋代弘賢]]著、『白沢之図』伝[[谷文晁]]模・[[関克明]]賛。：江戸後期の白沢研究書と図像。三人は[[耽奇会]]を通じて親交があった<ref name=":2">{{Cite web|title=12 白沢之図|url=https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20210000_12_869_kaii_hakutaku.html|website=京都産業大学|accessdate=2021-04-24|language=ja|author=佐々木聡}}</ref>。
=== 中国 ===
* [[葛洪]]『[[抱朴子]]』極言：「（黄帝）窮神奸、則記白澤之辞。」
* [[瞿曇悉達]]『{{仮リンク|開元占経|zh|開元占經|en|Treatise on Astrology of the Kaiyuan Era}}』巻一一六：「『瑞応図』曰：黄帝巡於東海、白澤出、達知万之情、以戒於民、為除災害。」{{sfn|原田|1914|p=414}}
* [[杜佑]]『[[通典]]』巻第一百七・礼六十七・大駕鹵簿：「次清遊隊、白澤旗二（分左右、各一人執、二人引、二人夾也）」「左右領軍白沢文」（白沢旗や白沢の模様が天子の軍に使われることを言う）
* {{仮リンク|張君房|zh|张君房}}『[[雲笈七籤]]』巻一百引王瓘『軒轅本紀』:「帝巡狩、東至海、登桓山、於海浜得白澤神獣、能言、達於万物之情。因問天下神鬼之事。自古精気為物・游魂為変者、凡万一千五百二十種、白澤言之、帝令以図写之、以示天下。」<ref name="yuanjian_leihan"/><ref name="ito-kaiki"/>
* 『[[新唐書]]』巻三十四 志第二十四 五行一:「韋后妹嘗為豹頭枕以辟邪、白澤枕以辟魅、伏熊枕以宜男、亦服妖也」([[韋皇后 (唐中宗)|韋皇后]]の妹の韋七姨（後に嗣虢王{{仮リンク|李邕 (嗣虢王)|label=李邕|zh|李邕 (虢王)}}妻）が魔除けのため白沢の枕を使用したことをいう。もとは唐の張鷟『朝夜僉載』に見える話<ref>{{cite book|和書|author=張鷟|title=朝夜僉載|volume=巻5|url=https://archive.org/stream/06047374.cn#page/n26/mode/2up}}</ref>)
* 『白沢図』『白沢図考』（いずれも逸書であり現存しない。『玉函山房輯佚書』に諸書の引用する『白沢図』の逸文を集めてある<ref name=":1">{{cite book|和書|author=馬国翰|title=玉函山房輯佚書|volume=巻77・白澤図|url=https://archive.org/stream/02097664.cn#page/n58/mode/2up}}</ref>）
* [[清]]の[[劉璋 (清)|劉璋]]の『[[斬鬼伝]]』：[[鍾馗]]の乗り物として<ref>{{Wikisourcelang-inline|zh|斬鬼傳}}</ref>。
== 現代における受容 ==
白沢は、[[20世紀]]末以降の[[ポピュラーカルチャー]]・[[サブカルチャー]]にもしばしば登場する。その例として、[[江口夏実]]による日本の漫画作品『[[鬼灯の冷徹]]』に登場する[[青年]]姿の「[[鬼灯の冷徹#桃源郷・天国|白澤]]」がいる{{Sfn|佐々木|2017|p=169}}<ref>{{Cite journal|author=高戸聰|year=|date=2017年6月|title=『白沢図』の展開から見えてくるモノからコトへ|url=https://www.toho-shoten.co.jp/review/review2017.html#t436|journal=東方|volume=436|page=|publisher=[[東方書店]]|accessdate=2020年9月6日}}</ref>。[[2017年]]には、同作の影響で、上述の『白沢図』を主題にした[[学術書]]が異例の売上をみせるという現象が起きた<ref>{{Cite web|title=『復元 白沢図』二刷出来|url=https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20180420/1524213165|website=白澤社ブログ|accessdate=2020-09-05|language=ja|publisher=}}</ref>。
<!-- 作品を追加する場合は、第三者言及等あるものでお願いします。（きりがないので。） -->
==注釈==
{{notelist2}}
{{Commonscat|Hakutaku}}
== 出典 ==
; 脚注
{{Reflist|33em|refs=
<ref name="ito-kaiki">[[伊藤清司]] 監修・解説『怪奇鳥獣図巻』2001 [[工作舎]]、底本: 作者・年代不詳（江戸時代）、底本の該当箇所の典拠:『[[雲笈七籤]]』の「軒轅本紀」</ref>
<ref name="yuanjian_leihan">{{citation|和書|last= |first=|author-link=|chapter=卷432 白澤 |title=御定淵鑑𩔖函 (四庫全書本) <!-- Yuding yuanjian leihan (Siqua library) --> |date=1019 |url=https://zh.wikisource.org/wiki/御定淵鑑𩔖函 (四庫全書本)/卷432#白澤 |lang=zh |via=Wikisource |quote=《黄帝内傳》曰帝廵狩東至海登桓山於海濱得白澤神獸能言逹於萬物之情因問天下鬼神之事自古及今精氣為物逰魂為變者凡萬一千五百二十種白澤言之帝令以圗寫之以示天下乃作辟邪之文以記之。}}</ref>
<ref name="yunji qiqian">{{citation|和書|last=張 |first=君房|author-link=:zh:张君房 |chapter=卷一百 紀傳部・紀一 |title=雲笈七籤え |date=1019 |url=https://zh.wikisource.org/wiki/雲笈七籤/100#軒轅本紀 |lang=zh |via=Wikisource |quote=《軒轅本紀》..帝巡狩東至海，登桓山，於海濱得白澤神獸，能言，達於萬物之情。因問天下鬼神之事，自古精氣為物，游魂為變者，凡萬一千五百二十種，白澤言之，帝令以圖寫之以示天下，帝乃作《祝邪之文》以祝之。}}</ref>
}}
; 参照文献
{{refbegin}}
* {{Citation|和書|title=復元 白沢図 古代中国の妖怪と辟邪文化|year=2017|last=佐々木|first=聡|publisher=白澤社|isbn=978-4768479643}}
* {{citation|和書|last=西岡 |first=弘 |author-link=<!--西岡弘 (中国学者) --> |title=神獣白沢考 |trans-title=A Study on 'SHINJYU HAKUTAKU' |journal=國學院短期大学紀要<!-- --> |volume=16 |date=1998a-03-23 |url=|pages=33-66 |naid=110000543008 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/browse/kokutanb/16/0/_contents/-char/ja}}
** {{citation|和書|last=西岡 |first=弘 |author-link=<!--西岡弘 (中国学者) --> |title=神獣白沢考 |work=
中国関係論説資料 第42号(1998年) 第2分冊 上 |date=1998b |url=https://books.google.com/books?id=H2MGAQAAMAAJ&q=白澤 |pages=3-7}}
* {{citation|和書|last=原田 |first=淑人 |author-link=原田淑人<!--Harada, Yoshito --> |title=瑞獣白沢及び角端に就いて |journal=東洋学報<!-- --> |volume=4 |number=3 |date=1914 |url=http://id.nii.ac.jp/1629/00003966/ |pages=413-422}}
{{refend}}
== 関連項目 ==
* オーディン
* [[エスス]]
* [[河姆渡文化]]
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:はくたく}}
[[Category:霊獣]]
[[Category:中国神話]]
[[Category:星神]]
[[Category:白星]]
== 生態 ==
中国明代の百科事典『三才図会』によると、東望山（江蘇省徐州市銅山区）に白沢という獣が住んでいた。白沢は人間の言葉を操り、そのときの為政者が有徳であれば姿をみせたと言う<ref name=":0">和書, https://archive.org/stream/02098359.cn#page/n10/mode/2up, 三才図会, 巻92・鳥獣4・白澤, 東望山有沢獣者、一名曰白澤、能言語。王者有徳、明照幽遠、則至。昔黄帝巡狩至東海、此獣有言為時除害。</ref><ref name="yuanjian_leihan"/>
<ref group="注">『淵鑑類函』</ref><ref name="yuanjian_leihan"/>原田（1914, p=414）や『佩文韻府』ではこれを『山海経』からの引用とするが、現存する『山海経』にこのような文はない<ref>西岡, 1998a; 西岡, 1998b, p7。松田稔（國學院大學教授。『山海経』専門）に拠る。</ref>。そのような生態から、白沢は[[麒麟]]や[[鳳凰]]などと同類の瑞獣とみなされる。
== 姿 ==
その姿を描いた図画が『三才図会』や日本の『[[和漢三才図会]]』にも掲載され描かれているが、その姿は白い[[獅子]]とされている<ref name=":0" />。
一方で、[[鳥山石燕]]の『[[今昔百鬼拾遺]]』に描かれた白沢は、頭には[[牛]]のような二本[[角]]があり、下顎には[[山羊]]のような髭を蓄え、[[眼]]が額にもう一つあり、更に胴体の側面に眼が三つあり、もう片方の側面にも三つあるとすれば合計で九つの眼をもっている。
白沢が三眼以上の眼を持つ姿は石燕以降と推測され、それより前には三眼以上の眼は確認できない{{要出典|date=2020年7月}}。たとえば『怪奇鳥獣図巻』（出版は[[江戸時代]]だがより古い中国の書物を参考に描かれた可能性が高い）の白沢は眼が二つである。この白沢は、麒麟の体躯を頑丈にしたような姿で描かれている<ref>[[伊藤清司]] 監修・解説『怪奇鳥獣図巻』2001 [[工作舎]]、底本: 作者・年代不詳（江戸時代）.</ref>。
== 獅と白沢 ==
『[[本草綱目]]』は、獅（[[ライオン]]）の別名を「白沢」とする説について言及している<ref>{{cite wikisource|和書|wslink=本草綱目/獸之二#獅|wslanguage=zh|title=本草綱目 獣之二 獅}}</ref>（その記述があるのは『[[説文解字]]』だとされているが確認できない<ref>[http://ctext.org/shuo-wen-jie-zi/zh?searchu=%E7%99%BD%E6%BE%A4 説文解字を「白澤」で検索]</ref>）。ただし『[[瑞応図]]』を元に、獅と白沢は異なると結論づけている。
== 白沢にまつわる文化 ==
=== 白沢図 ===
<!-- 医学などの祖とされる中国の伝説上の[[三皇五帝]]の一人である[[黄帝]]が、東方巡行した折に白沢に遭遇したとされる。-->伝説によれば、中国最古の[[王]]、[[黄帝]]が[[東シナ海|東海]]地方を巡行したおりに、[[恒山]]に登ったあとに訪れた海辺で白沢に出会った{{Refn|name="kenen"|『雲笈七籤』巻100引王瓘『軒轅本紀』<ref name="yunji qiqian"/><ref name="ito-kaiki"/>。}}{{Refn|name="huangdi_neichuan"|『淵鑑類函』引『黄帝内傳』<ref name="yuanjian_leihan"/>{{sfn|原田|1914|p=414}}。}}。その時黄帝に1万1520種に及ぶ天下の妖異鬼神の知識について語り世の害を除くため忠言した<ref name="kenen" /><ref name="huangdi_neichuan" />。黄帝はそれらの知識を部下に書き取らせた。こうしてできた書物を『白沢図』という。ここでいう妖異鬼神とは人に災いをもたらす病魔や[[天災]]の象徴であり、『白沢図』にはそれらへの対処法も記述されており、単なる図録ではなく今でいうところの防災[[マニュアル]]のようなものである。
伝説の真偽がどうであれ、『白沢図』という書物は古代中国に実際に存在した。しかしながら、[[北宋]]代に[[逸書|散逸]]してしまった{{Sfn|佐々木|2017}}。ただし、[[逸文]]がいくつか残っており<ref name=":1" />、さらに20世紀初頭、[[莫高窟]]から出土した[[敦煌文献]]のなかには『白沢図』と関連する図画（{{仮リンク|白沢精怪図|zh|白澤精恠圖|label=}}）が見つかっている。それらを参考材料として、現代の学者によって『白沢図』の復元が試みられている{{Sfn|佐々木|2017}}。
以上のような『白沢図』とは別に、[[唐代]]以降の[[中国の民俗宗教]]では、白沢そのものの図画が厄よけ（[[辟邪絵]]）になるとして信仰された<ref>{{Cite web|title=Ⅳ 白沢からクタベへ|url=https://www.kyoto-su.ac.jp/facilities/musubiwaza/gallery/202103_tenji00-4.html|website=京都産業大学|accessdate=2021-04-24|language=ja|author=笹方政紀}}</ref>{{Sfn|佐々木|2017|loc=第3章}}。日本でも江戸時代には、[[旅行ガイドブック]]に描いて道中のお守りとして身につけたり（[[旅行ガイドブック#日本の旅行ガイドブックの歴史|八隅蘆菴『旅行用心集』]]など<ref>{{Cite web|title=おうちでミュージアム「江戸刷リ物品定メ 二代目金沢文庫長の秘策」後編|url=https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ie2/tours/diary/20200417-bunko.html|website=[[神奈川県]]|accessdate=2020-07-13|language=ja|publisher=|date=2020年4月17日}}</ref>）、病魔よけに枕元においたりした。
=== 為政者と白沢 ===
白沢は徳の高い為政者の治世に姿を現すとされることと、病魔よけになると信じられていることから、為政者は身近に白沢に関するものを置いた。中国の[[皇帝]]は護衛隊の先頭に「白沢旗」を掲げたといわれる。
また、[[日光東照宮]][[拝殿]]の[[征夷大将軍|将軍]]着座の間の杉戸に白沢の絵が描かれている。
== 白沢が出てくる歴史資料 ==
=== 日本 ===
* 『[[大覚禅師]]語録』3巻:「忌。有遭狐魅者。良久。家無白澤図。妖怪自消除」（魔除けのために『白沢図』が流行していることを言う）
* 『和漢三才図会』：江戸中期の[[寺島良安]]が編纂した図入りの[[百科事典]]。
* 『今昔百鬼拾遺』：江戸中期の鳥山石燕が描いた[[妖怪]]の図録
* 『白沢考』[[屋代弘賢]]著、『白沢之図』伝[[谷文晁]]模・[[関克明]]賛。：江戸後期の白沢研究書と図像。三人は[[耽奇会]]を通じて親交があった<ref name=":2">{{Cite web|title=12 白沢之図|url=https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20210000_12_869_kaii_hakutaku.html|website=京都産業大学|accessdate=2021-04-24|language=ja|author=佐々木聡}}</ref>。
=== 中国 ===
* [[葛洪]]『[[抱朴子]]』極言：「（黄帝）窮神奸、則記白澤之辞。」
* [[瞿曇悉達]]『{{仮リンク|開元占経|zh|開元占經|en|Treatise on Astrology of the Kaiyuan Era}}』巻一一六：「『瑞応図』曰：黄帝巡於東海、白澤出、達知万之情、以戒於民、為除災害。」{{sfn|原田|1914|p=414}}
* [[杜佑]]『[[通典]]』巻第一百七・礼六十七・大駕鹵簿：「次清遊隊、白澤旗二（分左右、各一人執、二人引、二人夾也）」「左右領軍白沢文」（白沢旗や白沢の模様が天子の軍に使われることを言う）
* {{仮リンク|張君房|zh|张君房}}『[[雲笈七籤]]』巻一百引王瓘『軒轅本紀』:「帝巡狩、東至海、登桓山、於海浜得白澤神獣、能言、達於万物之情。因問天下神鬼之事。自古精気為物・游魂為変者、凡万一千五百二十種、白澤言之、帝令以図写之、以示天下。」<ref name="yuanjian_leihan"/><ref name="ito-kaiki"/>
* 『[[新唐書]]』巻三十四 志第二十四 五行一:「韋后妹嘗為豹頭枕以辟邪、白澤枕以辟魅、伏熊枕以宜男、亦服妖也」([[韋皇后 (唐中宗)|韋皇后]]の妹の韋七姨（後に嗣虢王{{仮リンク|李邕 (嗣虢王)|label=李邕|zh|李邕 (虢王)}}妻）が魔除けのため白沢の枕を使用したことをいう。もとは唐の張鷟『朝夜僉載』に見える話<ref>{{cite book|和書|author=張鷟|title=朝夜僉載|volume=巻5|url=https://archive.org/stream/06047374.cn#page/n26/mode/2up}}</ref>)
* 『白沢図』『白沢図考』（いずれも逸書であり現存しない。『玉函山房輯佚書』に諸書の引用する『白沢図』の逸文を集めてある<ref name=":1">{{cite book|和書|author=馬国翰|title=玉函山房輯佚書|volume=巻77・白澤図|url=https://archive.org/stream/02097664.cn#page/n58/mode/2up}}</ref>）
* [[清]]の[[劉璋 (清)|劉璋]]の『[[斬鬼伝]]』：[[鍾馗]]の乗り物として<ref>{{Wikisourcelang-inline|zh|斬鬼傳}}</ref>。
== 現代における受容 ==
白沢は、[[20世紀]]末以降の[[ポピュラーカルチャー]]・[[サブカルチャー]]にもしばしば登場する。その例として、[[江口夏実]]による日本の漫画作品『[[鬼灯の冷徹]]』に登場する[[青年]]姿の「[[鬼灯の冷徹#桃源郷・天国|白澤]]」がいる{{Sfn|佐々木|2017|p=169}}<ref>{{Cite journal|author=高戸聰|year=|date=2017年6月|title=『白沢図』の展開から見えてくるモノからコトへ|url=https://www.toho-shoten.co.jp/review/review2017.html#t436|journal=東方|volume=436|page=|publisher=[[東方書店]]|accessdate=2020年9月6日}}</ref>。[[2017年]]には、同作の影響で、上述の『白沢図』を主題にした[[学術書]]が異例の売上をみせるという現象が起きた<ref>{{Cite web|title=『復元 白沢図』二刷出来|url=https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20180420/1524213165|website=白澤社ブログ|accessdate=2020-09-05|language=ja|publisher=}}</ref>。
<!-- 作品を追加する場合は、第三者言及等あるものでお願いします。（きりがないので。） -->
==注釈==
{{notelist2}}
{{Commonscat|Hakutaku}}
== 出典 ==
; 脚注
{{Reflist|33em|refs=
<ref name="ito-kaiki">[[伊藤清司]] 監修・解説『怪奇鳥獣図巻』2001 [[工作舎]]、底本: 作者・年代不詳（江戸時代）、底本の該当箇所の典拠:『[[雲笈七籤]]』の「軒轅本紀」</ref>
<ref name="yuanjian_leihan">{{citation|和書|last= |first=|author-link=|chapter=卷432 白澤 |title=御定淵鑑𩔖函 (四庫全書本) <!-- Yuding yuanjian leihan (Siqua library) --> |date=1019 |url=https://zh.wikisource.org/wiki/御定淵鑑𩔖函 (四庫全書本)/卷432#白澤 |lang=zh |via=Wikisource |quote=《黄帝内傳》曰帝廵狩東至海登桓山於海濱得白澤神獸能言逹於萬物之情因問天下鬼神之事自古及今精氣為物逰魂為變者凡萬一千五百二十種白澤言之帝令以圗寫之以示天下乃作辟邪之文以記之。}}</ref>
<ref name="yunji qiqian">{{citation|和書|last=張 |first=君房|author-link=:zh:张君房 |chapter=卷一百 紀傳部・紀一 |title=雲笈七籤え |date=1019 |url=https://zh.wikisource.org/wiki/雲笈七籤/100#軒轅本紀 |lang=zh |via=Wikisource |quote=《軒轅本紀》..帝巡狩東至海，登桓山，於海濱得白澤神獸，能言，達於萬物之情。因問天下鬼神之事，自古精氣為物，游魂為變者，凡萬一千五百二十種，白澤言之，帝令以圖寫之以示天下，帝乃作《祝邪之文》以祝之。}}</ref>
}}
; 参照文献
{{refbegin}}
* {{Citation|和書|title=復元 白沢図 古代中国の妖怪と辟邪文化|year=2017|last=佐々木|first=聡|publisher=白澤社|isbn=978-4768479643}}
* {{citation|和書|last=西岡 |first=弘 |author-link=<!--西岡弘 (中国学者) --> |title=神獣白沢考 |trans-title=A Study on 'SHINJYU HAKUTAKU' |journal=國學院短期大学紀要<!-- --> |volume=16 |date=1998a-03-23 |url=|pages=33-66 |naid=110000543008 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/browse/kokutanb/16/0/_contents/-char/ja}}
** {{citation|和書|last=西岡 |first=弘 |author-link=<!--西岡弘 (中国学者) --> |title=神獣白沢考 |work=
中国関係論説資料 第42号(1998年) 第2分冊 上 |date=1998b |url=https://books.google.com/books?id=H2MGAQAAMAAJ&q=白澤 |pages=3-7}}
* {{citation|和書|last=原田 |first=淑人 |author-link=原田淑人<!--Harada, Yoshito --> |title=瑞獣白沢及び角端に就いて |journal=東洋学報<!-- --> |volume=4 |number=3 |date=1914 |url=http://id.nii.ac.jp/1629/00003966/ |pages=413-422}}
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== 関連項目 ==
* オーディン
* [[エスス]]
* [[河姆渡文化]]
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:はくたく}}
[[Category:霊獣]]
[[Category:中国神話]]
[[Category:星神]]
[[Category:白星]]
