サエーナ鳥とも呼ばれ、アヴェスター<ref>紀元前600年~300年頃に成立</ref>においては太古の海にある二本の大木のうちの一本に棲んでいた。この木の上でシームルグが羽ばたくと種子が巻き散らされ、その種子からはあらゆる種類の植物が生えた。しかし、ある時ダエーワたちによってこの大木が打ち倒されて枯れると、シームルグはアルブルズ山へと住処を移した<ref>伝説の英雄とモンスター,西東社 (2008), 伝説の英雄とモンスター,西東社 (2008)、138頁</ref>。
=== シャー・ナーメ(王書) ===
フェルドウスィーによる叙事詩『シャー・ナーメ(王書)<ref>10~11世紀にかけて記された。</ref>』では、シームルグは重要な役割をもって登場する。
ナリーマン(Nariman (father of Sām))家のサームの元に生まれたザールは、生まれた時から白髪だったため、父サームの命令によって遠い場所に捨てられた。エルブルズ山(アルブルズ山)に巣を置いて雛を育てていたシームルグがこの捨てられた赤ん坊を見つけ、巣に連れ帰って雛鳥と一緒に育て始めた。雛鳥もこの赤ん坊に危害を加えることはなかった。やがてサームの夢に不思議な青年が現れたことから、サームはかつて子供を捨てたことを後悔し、子供を捜すべくエルブルズ山にやって来た。サームを見つけたシームルグは、成長したサームの息子に別れの時が来た旨を告げ、自分の羽根の1枚を渡すと、サームの元まで連れて行った。そしてサームから感謝の言葉を受けてから山へ飛び去った。サームは息子にザールと名付けて共に山を下りた。サームが仕えるイラン王マヌーチェフル(Manuchehr)は、サームの子をシームルグが育てたと知ると非常に喜んだ)家のサームの元に生まれたザールは、生まれた時から白髪だったため、父サームの命令によって遠い場所に捨てられた。エルブルズ山(アルブルズ山)に巣を置いて雛を育てていたシームルグがこの捨てられた赤ん坊を見つけ、巣に連れ帰って雛鳥と一緒に育てた。やがてサームは子供を捨てたことを後悔し、子供を捜sしてエルブルズ山にやって来た。サームを見つけたシームルグは、成長したサームの息子に自分の羽根の1枚を渡し、「困ったことがあったら燃やすように」と言って、サームの元まで連れて行った。サームは息子にザールと名付けて共に山を下りた。サームが仕えるイラン王マヌーチェフル(Manuchehr)は、サームの子をシームルグが育てたと知ると非常に喜んだ<ref>フェルドウスィー,岡田訳 (1999), フェルドウスィー,岡田訳 (1999)、119-131頁。</ref><ref>カーティス,薩摩訳 (2002), カーティス,薩摩訳 (2002)、87頁。</ref><ref>ヘダーヤト,奥西訳註 (1999), ヘダーヤト,奥西訳註 (1999)、312頁。</ref>。
やがてザールは、[[カブール]]の{{仮リンク|ルーダーベ|en|Rudaba}}姫と結ばれる。ルーダーベがザールの子を身ごもったが、臨月となっても胎児は産まれずルーダーベを苦しめた。ザールは、かつてシームルグから貰った羽根のことを思い出し、シームルグが言ったように羽根の一部を香炉で燃やした。すぐにシームルグが現れ、生まれてくる子が強く賢い人物となる旨を告げると、出産のための助言を与えた。そして1枚の羽根を置いて飛び去った。シームルグの指示通り、ルーダーベを酒で酔わせた後に[[帝王切開|腹部を切開]]して無事に赤ん坊を取り上げ、腹部は縫合して薬を塗り、最後にシームルグの羽根で腹部を撫でた。こうしてルーダーベは救われ、生まれた子供は[[ロスタム]]と名付けられたやがてザールは、カブールのルーダーベ(Rudaba)姫と結ばれる。ルーダーベが出産する際、臨月となっても胎児は産まれずルーダーベを苦しめた。ザールは、シームルグの羽根の一部を香炉で燃やした。すぐにシームルグが現れ、生まれてくる子が強く賢い人物となる旨を告げ、出産のための助言を与えて、1枚の羽根を置き飛び去った。シームルグの指示により、ルーダーベを酒で酔わせた後に腹部を切開して赤ん坊を取り上げ、腹部は縫合して薬を塗り、シームルグの羽根で傷口を撫でて治癒させた。こうしてロスタムは生まれた。<ref>[[#フェルドウスィー,岡田訳 (1999)|, フェルドウスィー,岡田訳 (1999)]]、182-186頁。</ref><ref name="カーティスp87" />。
成長したロスタムが、イランの王子{{仮リンク|イスファンディヤール|en|Esfandiyār}}と戦って傷ついた時、ザールは香炉でシームルグの羽根の一部を燃やした。再びシームルグが現れて、まずロスタムの傷を治療し、やはり負傷していた彼の馬{{仮リンク|ラクシュ|en|Rakhsh}}をも治療した。それから、ロスタムからイスファンディヤールと戦うことになった事情を聞くと、イスファンディヤールと和解を試みるよう、そしてもしイスファンディヤールが和解を受け入れないなら、シームルグが作らせた矢を用いて彼と戦うよう助言した。再びイスファンディヤールと相まみえたロスタムが和解を試みたが、イスファンディヤールはなおも戦おうとするため、ロスタムはシームルグが指示した方法で矢を放った。矢はイスファンディヤールの目に深々と刺さり、これが彼の致命傷となった<ref>[[#フェルドウスィー,岡田訳 (1999)|フェルドウスィー,岡田訳 (1999)]]、312-323頁。</ref><ref>[[#カーティス,薩摩訳 (2002)|カーティス,薩摩訳 (2002)]]、87-90頁。</ref>。