15,557
回編集
差分
ナビゲーションに移動
検索に移動
ページの作成:「''''''高御産巣日神'''（タカミムスビノカミ）は、日本神話に登場する神<ref name="Y">戸部民夫 『八百万の神々 日本の神霊たちの…」
''''''高御産巣日神'''（タカミムスビノカミ）は、日本神話に登場する神<ref name="Y">戸部民夫 『八百万の神々 日本の神霊たちのプロフィール』 新紀元社</ref>。別天津神・造化三神のうちの一柱である<ref name="Y" />。
== 概要 ==
『古事記』では'''高御産巣日神'''（たかみむすびのかみ）、'''高木神'''<ref>『[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1031649/18 古事記]』幸田成友 校訂 岩波書店p.32（国立国会図書館）</ref>、『日本書紀』では'''高皇産霊尊'''と書かれる<ref name="NI">薗田稔、茂木栄 『日本の神々の事典 神道祭祀と八百万の神々』学研</ref>。また[[国譲り|葦原中津国平定]]・[[天孫降臨]]の際には'''高木神'''（たかぎのかみ）、'''高木大神'''（たかぎのおおかみ）という名で登場する<ref name="NI" />。
別名の通り、本来は'''高木が神格化されたもの'''を指したと考えられている。「産霊（むすひ）」は生産・生成を意味する言葉で、神皇産霊神とともに「創造」を神格化した神である<ref name="Y" /><ref group="私注">管理人には「むすひ」とは「境界を繋ぐ者」とも受け取れる。</ref>。
日本書紀の神代下では、将軍や皇孫を葦原中国に降ろす神として登場する<ref>「日本書紀 (一)」 岩波文庫</ref>。
== 記述 ==
『古事記』によれば、[[天地開闢 (日本神話)|天地開闢]]の時、最初に[[天之御中主神]]（あめのみなかぬし）が現れ、その次に[[高天原]]に出現したとされるのが'''高御産巣日神'''（たかみむすび）という神である<ref name="Y" />。この次に[[カミムスビ|神産巣日神]]（かみむすび）が出現した。子に[[オモイカネ|思金神]]（おもいかね）、[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）がいる<ref name="Y" />。
天之御中主神・高御産巣日神・神産巣日神は、共に[[別天津神|造化の三神]]とされ、いずれも性別のない神、かつ人間界から姿を隠している「独神（ひとりがみ）」とされている<ref name="Y" />。ただし神産巣日神を女神、高御産巣日神を男神とする説がある。
この造化三神のうち、高御産巣日神と神産巣日神は、その活動が皇室・朝廷に直接的に大いに関係していると考えられたため、神祇官八神として八神殿の第一と第二神殿で祀られた<ref name="NI" />。
高御産巣日神は、『日本書紀』では天地初発条一書第四に「又曰く〜」という形式で登場しており、また神代下では高天原から葦原中国に神などを降ろす神として主に記述され、巻十五の「顕宗紀」では阿閉事代が任那に派遣され壱岐及び対馬に立ち寄った際に名前が登場し、'''月神と日神の祖であり天地を創造した功績があった'''とされている<ref group="私注">要は高御産巣日神とは[[伊邪那岐命]]の別の相のことと思われる。[[オモイカネ|思金神]]（おもいかね）と[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）の系譜に接続し、この２神の子孫を直接の賀茂系の神から外すための神なのではないだろうか。</ref>。また、『延喜式』「祝詞」・「出雲国神賀詞」では「'''神王高御魂命'''」とされている。
== 系譜 ==
『古事記』では[[天照大御神]]（あまてらすおおみかみ）の御子神の[[天忍穂耳命]]（あめのおしほみみのみこと）が、高御産巣日神の娘である[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）と結婚して生まれたのが天孫[[ニニギ|邇邇芸命]]（ににぎのみこと）である。このことから高御産巣日神は天孫邇邇芸命の外祖父に相当する<ref name="Y" />。
また、[[天津国玉神]]（あまつくにたま）の子である[[アメノワカヒコ|天若日子]]（あめのわかひこ）が、天孫降臨に先立って降ったが復命せず、問責の使者の[[雉]]（きぎし）の鳴女（なきめ）が参るとこれを矢で射殺する<ref name="N">戸部民夫 『日本神話 神々の壮麗なるドラマ』 新紀元社</ref>。その矢は高天原まで届き、高御産巣日神が「もし高天原に叛く意志があるならこの矢に当たるであろう」と述べて投げ返すと、矢は天若日子を討ったという<ref name="N" />。
他に即位前の[[神武天皇]]が[[神武東征|熊野から大和に侵攻する場面]]で神武天皇を助けた[[高倉下]]の夢に高御産巣日神が登場する。高御産巣日神は天照大御神（あまてらすおおみかみ）より優位に立って天孫降臨を司令する。また、のちの皇室は高御産巣日神の血を引いている（前述）が、高御産巣日神が本来の[[皇祖神]]だとする説がある<ref>『神道の本 八百万の神々がつどう秘教的祭祀の世界』 学研</ref>。
奴奈川神社には高御産巣日神は[[意支都久振為命]]を産み、命が[[卑都久振為命]]を産み、同神が[[沼河比売]]を産んだとされる伝承がある。また[[葛城国造]]・[[宇佐国造]]・[[賀茂県主]]の遠祖である[[天活玉命]]の父であるとされる。
== 諸説 ==
女神的要素を持つ神皇産霊神と対になり、男女の「むすび」を象徴する神とする説がある<ref name="Y" />。
== 祀る神社 ==
*宇奈多理坐高御魂神社（奈良市）（奈良県奈良市）
*[[天神社 (大和高田市)]] （[[奈良県]][[大和高田市]]）
*[[天神神社 (瑞穂市)]] （[[岐阜県]][[瑞穂市]]）
*[[サムハラ神社]] （[[大阪府]][[大阪市]][[西区 (大阪市)|西区]][[立売堀]]）
*[[東京大神宮]] （[[東京都]][[千代田区]][[富士見 (千代田区)|富士見]]）
*[[高城神社]] （[[熊谷市|埼玉県熊谷市]]）
*[[安達太良神社]] （[[福島県]][[本宮市]]）
*[[高天彦神社]] （[[奈良県]][[御所市]]）
*[[高木神社 (墨田区)|高木神社]] （東京都墨田区）
*高木神社 （東京都葛飾区）
*[[七夕神社]]（[[福岡県]][[小郡市]]）
== 関連項目 ==
* [[盤古]]
* [[炎帝神農|炎帝]]
* [[天之御中主神]]
* [[神産巣日神]]
* [[宇摩志阿斯訶備比古遅神]]
* [[天之常立神]]
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:たかみむすひのかみ}}
[[Category:日本神話]]
[[Category:樹木神]]
== 概要 ==
『古事記』では'''高御産巣日神'''（たかみむすびのかみ）、'''高木神'''<ref>『[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1031649/18 古事記]』幸田成友 校訂 岩波書店p.32（国立国会図書館）</ref>、『日本書紀』では'''高皇産霊尊'''と書かれる<ref name="NI">薗田稔、茂木栄 『日本の神々の事典 神道祭祀と八百万の神々』学研</ref>。また[[国譲り|葦原中津国平定]]・[[天孫降臨]]の際には'''高木神'''（たかぎのかみ）、'''高木大神'''（たかぎのおおかみ）という名で登場する<ref name="NI" />。
別名の通り、本来は'''高木が神格化されたもの'''を指したと考えられている。「産霊（むすひ）」は生産・生成を意味する言葉で、神皇産霊神とともに「創造」を神格化した神である<ref name="Y" /><ref group="私注">管理人には「むすひ」とは「境界を繋ぐ者」とも受け取れる。</ref>。
日本書紀の神代下では、将軍や皇孫を葦原中国に降ろす神として登場する<ref>「日本書紀 (一)」 岩波文庫</ref>。
== 記述 ==
『古事記』によれば、[[天地開闢 (日本神話)|天地開闢]]の時、最初に[[天之御中主神]]（あめのみなかぬし）が現れ、その次に[[高天原]]に出現したとされるのが'''高御産巣日神'''（たかみむすび）という神である<ref name="Y" />。この次に[[カミムスビ|神産巣日神]]（かみむすび）が出現した。子に[[オモイカネ|思金神]]（おもいかね）、[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）がいる<ref name="Y" />。
天之御中主神・高御産巣日神・神産巣日神は、共に[[別天津神|造化の三神]]とされ、いずれも性別のない神、かつ人間界から姿を隠している「独神（ひとりがみ）」とされている<ref name="Y" />。ただし神産巣日神を女神、高御産巣日神を男神とする説がある。
この造化三神のうち、高御産巣日神と神産巣日神は、その活動が皇室・朝廷に直接的に大いに関係していると考えられたため、神祇官八神として八神殿の第一と第二神殿で祀られた<ref name="NI" />。
高御産巣日神は、『日本書紀』では天地初発条一書第四に「又曰く〜」という形式で登場しており、また神代下では高天原から葦原中国に神などを降ろす神として主に記述され、巻十五の「顕宗紀」では阿閉事代が任那に派遣され壱岐及び対馬に立ち寄った際に名前が登場し、'''月神と日神の祖であり天地を創造した功績があった'''とされている<ref group="私注">要は高御産巣日神とは[[伊邪那岐命]]の別の相のことと思われる。[[オモイカネ|思金神]]（おもいかね）と[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）の系譜に接続し、この２神の子孫を直接の賀茂系の神から外すための神なのではないだろうか。</ref>。また、『延喜式』「祝詞」・「出雲国神賀詞」では「'''神王高御魂命'''」とされている。
== 系譜 ==
『古事記』では[[天照大御神]]（あまてらすおおみかみ）の御子神の[[天忍穂耳命]]（あめのおしほみみのみこと）が、高御産巣日神の娘である[[万幡豊秋津師比売命]]（よろづばたとよあきつしひめのみこと）と結婚して生まれたのが天孫[[ニニギ|邇邇芸命]]（ににぎのみこと）である。このことから高御産巣日神は天孫邇邇芸命の外祖父に相当する<ref name="Y" />。
また、[[天津国玉神]]（あまつくにたま）の子である[[アメノワカヒコ|天若日子]]（あめのわかひこ）が、天孫降臨に先立って降ったが復命せず、問責の使者の[[雉]]（きぎし）の鳴女（なきめ）が参るとこれを矢で射殺する<ref name="N">戸部民夫 『日本神話 神々の壮麗なるドラマ』 新紀元社</ref>。その矢は高天原まで届き、高御産巣日神が「もし高天原に叛く意志があるならこの矢に当たるであろう」と述べて投げ返すと、矢は天若日子を討ったという<ref name="N" />。
他に即位前の[[神武天皇]]が[[神武東征|熊野から大和に侵攻する場面]]で神武天皇を助けた[[高倉下]]の夢に高御産巣日神が登場する。高御産巣日神は天照大御神（あまてらすおおみかみ）より優位に立って天孫降臨を司令する。また、のちの皇室は高御産巣日神の血を引いている（前述）が、高御産巣日神が本来の[[皇祖神]]だとする説がある<ref>『神道の本 八百万の神々がつどう秘教的祭祀の世界』 学研</ref>。
奴奈川神社には高御産巣日神は[[意支都久振為命]]を産み、命が[[卑都久振為命]]を産み、同神が[[沼河比売]]を産んだとされる伝承がある。また[[葛城国造]]・[[宇佐国造]]・[[賀茂県主]]の遠祖である[[天活玉命]]の父であるとされる。
== 諸説 ==
女神的要素を持つ神皇産霊神と対になり、男女の「むすび」を象徴する神とする説がある<ref name="Y" />。
== 祀る神社 ==
*宇奈多理坐高御魂神社（奈良市）（奈良県奈良市）
*[[天神社 (大和高田市)]] （[[奈良県]][[大和高田市]]）
*[[天神神社 (瑞穂市)]] （[[岐阜県]][[瑞穂市]]）
*[[サムハラ神社]] （[[大阪府]][[大阪市]][[西区 (大阪市)|西区]][[立売堀]]）
*[[東京大神宮]] （[[東京都]][[千代田区]][[富士見 (千代田区)|富士見]]）
*[[高城神社]] （[[熊谷市|埼玉県熊谷市]]）
*[[安達太良神社]] （[[福島県]][[本宮市]]）
*[[高天彦神社]] （[[奈良県]][[御所市]]）
*[[高木神社 (墨田区)|高木神社]] （東京都墨田区）
*高木神社 （東京都葛飾区）
*[[七夕神社]]（[[福岡県]][[小郡市]]）
== 関連項目 ==
* [[盤古]]
* [[炎帝神農|炎帝]]
* [[天之御中主神]]
* [[神産巣日神]]
* [[宇摩志阿斯訶備比古遅神]]
* [[天之常立神]]
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:たかみむすひのかみ}}
[[Category:日本神話]]
[[Category:樹木神]]
