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== 「楚辞」天問による伝承 ==
夫の[[禹]]が「轘轅山」の治水工事を行う際、難工事だったので「太鼓を叩くから、太鼓の音が聞こえたら食事を持ってくるように」と女嬌に求めた。[[禹]]は熊に変身して工事を行ったが、足で蹴飛ばした石が太鼓に当たり音を立てた。[[禹]]は工事に夢中でそのことに気づかなかったが、太鼓が鳴る音を聞いた女嬌は[[禹]]に昼食を届けに出かけた。女嬌は熊を見て夫とは思わず逃げ出したが、[[禹]]の方もあわてて熊の姿のままで妻を追いかけてしまった。熊に追いかけられた女嬌は恐れてますます逃げた。そして、ついにからだを一ゆすりすると彼女は石と化してしまった。これを見て怒った[[禹]]が「わしの子供を返せ」と叫んだところ、石は北の方に割れ「[[啓]]」という子供を生んだ。[[啓]]とは「割れる」という意味である<ref>中国の神話伝説 上、袁珂, 1993, 青土社, page350-351</ref>。
 
== 私的解説 ==
[[塗山氏女]]は夫である[[禹]]の変身した姿である熊を見て逃げ出してしまう。要は彼女は「[[逃走女神]]」の一種であって、逃げ出した後に石と化す('''死'''の暗喩)ところは、月に逃げてヒキガエルと化してしまう[[嫦娥]]と、神話的に結果が「'''死'''」を意味する、という点で「'''同じ女神'''」といえる。ただし、塗山氏女は「普通の女性」的に描かれていて、[[嫦娥]]のような[[西王母]]的な性質には乏しい。また蛇身人頭の女神でもないので[[女媧]]的とも言いがたい。
 
[[塗山氏女]]の夫である[[禹]]は統治(治水)に成功した[[黄帝]]になぞらえられている面があり、[[嫦娥]]の夫である[[羿]]は弓の名手であって、やはり[[黄帝]]になぞらえられている面がある。[[黄帝]]に実在の人物としてのモデルが存在したとすれば、その人物は「'''妻とはあまりうまくいっていなかった'''」と推察される状況である。
 
 
ただ、獣(熊)と化した夫の姿を見てしまったことが、夫婦の決別と塗山氏女の死に繋がるので、これは「見るな」の[[禁忌]]を伴う[[プシューケー]]型神話・伝承の起源の一つに繋がると考えられる。また、異形の夫との関わりの中でやはり「見るな」の禁忌が関わってくる「[[青ひげ]]型神話・伝承」の起源にも繋がる可能性がある。
== 参考文献 ==
== 関連項目 ==
* [[プシューケー]]
* [[青ひげ]]
* [[巫山神女]]
* [[嫦娥]]

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