=== 熊トーテムについて ===
檀君神話の檀君のトーテムは熊であると思う。そして、これが父系でなく母系のトーテムであることが興味深いと感じる。13世紀の朝鮮と言えば、儒教の影響もあるし父系社会であると思うし、母系の要素がどのくらい社会的に残存していたのか定かでないのだが、檀君神話にはトーテムが母方のものである、という母系の要素が残っており、それが檀君神話の起源が父系の文化が確立されるよりも前の古い時代にあることを示唆しているように思う。中国の神話では、炎帝や黄帝については「有熊氏」とか「有熊国」というものが関わっており、この国の住人であった黄帝と炎帝の父とされる者が「熊を操ることが巧みだった」と言われているのは、彼らのトーテムが熊であり、熊と近しい存在と考えられていたからではないか、と思う。ただし、中国の神話では黄帝と炎帝の「熊トーテム」は父系のものであって、母系のトーテムとはされていない。これは時代が下るにつれて、母系のトーテムが父系のトーテムへと変更されてしまったのではないか、と考える。日本神話は記紀神話の段階で、大抵が人間に近い人格神にされてしまっていて、熊トーテムの存在は明確でない。ただし、神話の中には名前に「熊」とつく神が複数存在するし、信仰の対象となっている「熊野」という地名が熊と神霊とに密接な関係があることを示しているように思う。よって、トーテムから見ても檀君は炎帝に近い存在なのではないか、と思われる。
また、檀君神話には熊と虎という2種類のトーテムが登場するが、熊は成功し、虎は失敗する、というようなトーテムによる行動結果の差があり、熊の方が虎よりも優位である、という表現がなされている。トーテム(出自)によって階級がある、という階級社会が形成されていることを示すものと思われる。
=== 岩戸神話と檀君 ===
檀君神話では熊女は自ら洞穴に籠もって人間になるための修行をする。それが成功したから彼女は人間になれる。日本神話では天照大神が岩戸に閉じこもり、結果的には部下の神々に救出される。これらは一方では、熊のような冬眠をする動物の冬ごもりから着想を得たものであると思うし、熊がトーテムであることとも関連すると思う。
== 参考文献 ==