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、 2022年9月2日 (金) 06:21
'''高麗葬'''(こうらいそう、コリョジャン)は、[[朝鮮|朝鮮半島]]の[[高句麗]]時代(国法)、[[高麗]]時代、李氏朝鮮時代(風習)に存在した高齢になった父母を山又は墓場に捨てるという法律で定められた行為、又は働けなくなった[[棄老|老人を山に捨てる]][[風習]]、またはなくなる前に墓に生きたまま閉じ込めて葬ることある{{sfn|新聞集成明治編年史編纂会|1936|p=89}}。高句麗時代は法律による義務であり、朴ジョンスンが国法的に従って老母をおぶって山に登り、実際に捨てようとしたが、自分を捨てようとする息子の帰り道のために迷わないように折っていたという老母の行為を受けて法律を無視して助け、隠して面倒を見た。[[唐]]の使者による年貢増税のための嫌がらせクイズからその老母の知恵で助けられた、それによって国法としては廃止されるきっかけになったという逸話が残っている<ref name=":0">{{Cite web |title=[オピニオン]年齢と賢明さ |url=https://www.donga.com/jp/article/all/20100407/310988/1 |website=www.donga.com |date=2010-04-07 |accessdate=2022-01-30 |language=ja |quote=高麗葬(高句麗時代に老衰した者を墓室に移し死後そのまま葬ったこと)風習のあった高句麗時代、朴ジョンスンは、年老いた母親を背中におぶって、山に登った。彼が涙を流しながら、別れのお辞儀をすると、老母は、「あなたが道に迷わないように、木の枝を折って印をつけておいたよ」と話した。到底老母を捨てることのできなかった彼は、国法に反して、老母を連れ戻し、こっそり面倒を見た。そのころ、唐の使者が同じ格好をしている馬2頭を連れてきて、どちらが母馬で、どちらが子馬かを見分けろ、という問題を出した。もし間違えたら、年貢を増やすと主張した。この問題で悩んだ息子に、老母が話した。「馬を飢えさせた後、まぐさを与えなさい。先に食べる方が子馬だよ」。高麗葬を廃止することになったエピソードとして伝えられている。}}</ref>。 [[東洋学|東洋学者]]・[[ウィリアム・グリフィス]]の1882年に出版した『[[隠者の国・朝鮮]]』で「朝鮮社会で老人を生きたまま埋めてしまう高麗葬と山神や海神のために人を供える人祭([[人身御供|人身供養]])が盛んに行われたため」<ref>{{Cite web |title=[아알모모] 우리가 늙은 부모님을 산에 버렸다고? |url=https://www.chosun.com/site/data/html_dir/2017/02/16/2017021603110.html |website=조선일보 |date=2020-07-21 |accessdate=2022-01-30 |language=ko |last=조선일보}}</ref>、李氏朝鮮王(どの王か不明)によって、人身供養と共に禁止された悪習として、初めて広く世界に紹介された<ref name="gri" /><ref>{{Cite web |title=「高麗葬は日本のせい」 - [[シンシアリー (著作家)]] |url=https://sincereleeblog.com/2020/01/24/%E3%80%8C%E9%AB%98%E9%BA%97%E8%91%AC%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%81%9B%E3%81%84%E3%80%8D/ |website=sincereleeblog.com |accessdate=2022-01-30 |publisher=[[シンシアリー (著作家)]]}}</ref>。
== 概要 ==
高麗以前の高句麗時代には国法であり、老衰した者を墓室に移し、放置することが国民に義務付けられていた。山に老母をおぶって捨てに行った息子が、自身が帰り道迷わないように枝を折ってくれていた母の優しさで心を変え、国法に反して、隠れて老母の面倒をみていたこと、その老母の知恵で唐の使節による年貢増税から救われたことが、国法廃止に繋がったという逸話が残っている<ref name=":0" />。グリフィスは、高麗葬とは日本でも17世紀頃まではあり、[[李氏朝鮮|朝鮮]](19世紀末)では依然として続けられている「老人を生きたまま埋めてしまう習慣」<ref name="gri">{{Harvnb|Griffis|2011|loc=pp.82-83}}</ref>で[[人身御供]]の[[迷信]]の類であると、紹介していた。これは、[[高句麗]]の時代に大きな墓を作り、墓室(土室)に老境極まって小児のようになった老人を入れて命が尽きるまで中で生活できるよう食料と共に封じ、死後は副葬品を足してそのまま葬ったという話<ref> {{Citation |和書| last =工藤 | first =茂|author-link=|year =2005| title =姨捨の系譜| publisher =おうふう|isbn=978-4273033712}}</ref>をやや省略して伝えたもので、高麗塚や高麗墳とも呼ばれたのはこのためである。その後、生きたまま葬ることから、老いて働けなくなった親や[[認知症]]の親を山に運んで一定期間の食料とともに置いてくる慣習に変わり、高麗葬と呼ばれるようになったという。捨てた場所により高麗山や高麗谷などとも呼ばれたわけであるが、高麗の名前がついているものの[[コリア]]と同じ程度の意味で、必ずしも高麗王朝と関係があるわけではない。
現在の[[大韓民国|韓国]]でも、高麗葬は「衰弱した親を見慣れぬ場所に遺棄する行為」<ref name="ch">{{cite news| url=http://japanese.joins.com/article/894/183894.html|title=【コラム】自らおとしめる「日帝残滓」の言葉、使わなければならないのか=韓国(1) | publisher=中央日報日本語版| date=2014-04-08 |accessdate=2014-04-16}}</ref>を意味し、いわゆる日本語の「姥捨て」に相当する言葉である。現代で実際に起きた事件は、「新高麗葬」として報道された<ref name="ch"/>。朝鮮では相手を脅し罵倒するときに使われる「高麗葬にして遣るぞ」という表現がある{{sfn|新聞集成明治編年史編纂会|1936|p=89}}。
老父母を山に捨てる行為が[[葬儀]]風習として実在したかは議論があるところだが、韓国では、これは孝を勧奨するために([[仏教]]における)『[[雑宝蔵経]]』の「棄老国説話」と([[道教]]における)『[[老子道徳経|老子伝]]』の巻6の8「原穀、{{Ruby|祖父|おほぢ}}を山へ捨つる事」を結合して作り出されたものであるという説がある。[[1919年]]に発行された『傳説の朝鮮』には「不幸息子」という童話が収録され{{sfn|三輪環|1919|pp=230-232}}、[[1924年]]に[[朝鮮総督府]]で発行された『朝鮮童話集』には「親を捨てる男」という話が収録されているが、老いた親(前者は祖父、後者は祖母)を高麗葬して山に捨てた父を、子が諭すという内容であった{{sfn|朝鮮総督府|1924|pp=110-116}}。
老人を山に捨てる風習が一般的なものとして実在したかどうかは別にして、朝鮮半島はかなり貧しかったこともあり、貧困のために高齢の老父母を餓死させることはあったようで、15世紀に[[儒教]]が民衆にも浸透すると、それらを戒めるために「[[孝]]」を推奨する説話が登場したという説には一定の説得力がある。
近代の[[大韓民国|韓国]][[小説]]や[[映画]]に取り上げられることもあった。[[金綺泳]](キム・ギヨン<ref>(韓国語)[[:ko:김기영 (영화 감독)]]</ref>)監督が[[1963年]]に発表した映画『高麗葬<ref>高麗葬([[:en:Goryeojang|Goryeojang]])。金綺泳DVDコレクションに収蔵。日本語字幕付き。</ref><ref>[[第21回東京国際映画祭]] [http://2008.tiff-jp.net/report/daily.php?itemid=676 「キム・ギヨンふたたび」] 2008年10月17日</ref>』では、飢えに苦しむ大家族で老いた後妻が死を迫られるという高麗葬の風習が登場する。ただし、内容は血縁関係の無い兄弟と後妻の子供が争うという復讐劇であった。また、[[1978年]]に[[全商国]]が『高麗葬』という短編小説を書いており、これは『韓国現代短編小説』に収録されている。
==反日==
高麗葬は、日本の『[[うばすてやま]]』のお話とほぼ内容が同じであり、棄老伝説や道徳説話との関連が考えられるわけだが、なぜか[[文化放送 (韓国)|韓国テレビ局MBC]]の番組『神秘なTVサプライズ』は、[[2011年]]、高麗葬は「多くの文化財が埋蔵されている墓を盗掘するため日本がねつ造した言い訳だ」という[[反日]]の論調でこれを伝え、「高麗葬が学者らの主張通りに、日本によるねつ造の歴史ならば、いち早く誤った歴史を正さなければならない」と放送した<ref>{{cite news| url=http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0905&f=national_0905_049.shtml|title=生きた老人を捨てる「高麗葬」は、日本のねつ造で陰謀=韓国テレビ | publisher= サーチナ| date=2011-09-05 |accessdate=2014-04-16}}</ref>。盗掘と結び付けた理由はよくわからない。高麗葬は韓国の百科事典や国語辞典に普通に載っている言葉である<ref>[http://dic.daum.net/word/view.do?wordid=kkw000016661&q=%EA%B3%A0%EB%A0%A4%EC%9E%A5 고려장]</ref>。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Citation |和書| last = | first =|editor=新聞集成明治編年史編纂会|year =1936| title =新聞集成明治編年史|volume=第6 | chapter=朝鮮の奇習| publisher =林泉社|url={{NDLDC|1920367/72}} 国立国会図書館デジタルコレクション}}
* 『韓国現代短編小説』 中上健次/編 安宇植/訳 [[新潮社]] ISBN 4105182013
* {{Citation |和書| last = | first =|author=三輪環 |series=朝鮮民俗資料 ; 第2編| year =1919 | title =伝説の朝鮮| publisher =博文館|url={{NDLDC|959521/122}} 国立国会図書館デジタルコレクション}}
* {{Citation |和書| editor=朝鮮総督府|author-link=|series=朝鮮民俗資料 ; 第2編| year =1924 | title =朝鮮童話集| publisher =朝鮮総督府|url={{NDLDC|1906801/60}} 国立国会図書館デジタルコレクション}}
* {{Citation | last =Griffis | first =William Elliot|author-link=ウィリアム・グリフィス|title=Corea the Hermit Nation|year=2011|publisher=Kessinger Publishing|isbn=978-1169852068}}(原書は1894年公刊)
== 関連項目 ==
* [[高麗史]]
* [[うばすてやま]]
* [[冠着山#棄老伝説]]
== 外部リンク ==
* [https://blog.goo.ne.jp/malechoir/e/cb04b009e358ddf07c777ee720b92a17 高麗葬伝説] - 北岳山麓合唱団
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[[Category:朝鮮神話]]
[[Category:岩戸型]]