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== 概要 ==
フェニックスは、古代エジプトの神話に登場する、聖なる鳥[[ベンヌ]]がその原型だと考えられている<ref name="アランp46">アラン,上原訳 (2009), p. 46.</ref><ref name="松平p189">松平 (2005), p. 189.</ref>。当時のエジプト人は、太陽神ラーに従う[[ベンヌ]]はヘリオポリスのラーの神殿で燃やされている炎へ毎夜飛び込んで死に、毎朝その炎から生まれると信じていた。ベンヌはすなわち、毎夕に沈み毎朝昇る太陽を象徴していた<ref name="アランp46" />。
この話が、古代ギリシアの歴史家[[ヘロドトス]](紀元前485年頃 この話が、古代ギリシアの歴史家ヘロドトス(紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)の元に伝えられると、彼はその著作『[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]]』において、エジプトの東方に位置するアラビアに住む鳥フェニックスとして紹介した。そこでのフェニックスは、[[鷲]]に似た体型の、金色と赤で彩られた羽毛を持つ鳥で、父親の鳥が死ぬとその遺骸を雛鳥が[[没薬紀元前420年頃)の元に伝えられると、彼はその著作『歴史]]で出来た入れ物に入れてヘリオポリスに運ぶ習性があるとされた』において、エジプトの東方に位置するアラビアに住む鳥フェニックスとして紹介した。そこでのフェニックスは、鷲に似た体型の、金色と赤で彩られた羽毛を持つ鳥で、父親の鳥が死ぬとその遺骸を雛鳥が没薬で出来た入れ物に入れてヘリオポリスに運ぶ習性があるとされた<ref name="アランp46" /><ref>[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], pp. 186-187.</ref>。
初期キリスト教の司教であった[[クレメンス1世 (ローマ教皇)|聖クレメンス]](初期キリスト教の司教であった聖クレメンス(? - 101年?)が記したところでは、フェニックスは寿命を迎えると、自分で[[香料]]や没薬などを集めて棺を準備してその中に入り、間もなく死ぬと、その遺骸から虫が生まれて遺骸を食べ尽くし、やがて虫に羽毛が生えて飛んでいくとされた)が記したところでは、フェニックスは寿命を迎えると、自分で香料や没薬などを集めて棺を準備してその中に入り、間もなく死ぬと、その遺骸から虫が生まれて遺骸を食べ尽くし、やがて虫に羽毛が生えて飛んでいくとされた<ref name="松平p187">[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], p. 187.</ref>。同様の記述は[[プリニウス]](22年頃 。同様の記述はプリニウス(22年頃 - 79年)の『[[#博物誌 (プリニウス)|博物誌]]』にもすでにみられている79年)の『博物誌』にもすでにみられている<ref>[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], pp. 187-188.</ref>。
なお、古代ローマの歴史家[[タキトゥス]](55年頃 なお、古代ローマの歴史家タキトゥス(55年頃 - 120年頃)の『{{仮リンク|年代記 120年頃)の『年代記 (タキトゥス)|en|Annals (Annals (Tacitus)|label=年代記}}』によると、34年にフェニックスが現れたという)』によると、34年にフェニックスが現れたという<ref name="松平p187" />。
フェニックスの伝承は、古代ギリシアや古代ローマの著述家によって次第に変化していった<ref name="アランp46" />。ローマの地理学者{{仮リンク|ポンポニウス・メラ|en|Pomponius Mela|label=メラ}}は[[43年]]頃に、その著作『地誌』において、フェニックスは500年たつと自分で積み上げた香料を薪として炎の中で死ぬが、その炎から再び生まれてきて、自分の遺骨をエジプトに運んで埋葬する旨を記した。ローマの地理学者ポンポニウス・メラ(Pomponius Mela)は43年頃に、その著作『地誌』において、フェニックスは500年たつと自分で積み上げた香料を薪として炎の中で死ぬが、その炎から再び生まれてきて、自分の遺骨をエジプトに運んで埋葬する旨を記した<ref name="松平p188">[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], p. 188.</ref>。
ローマの著述家{{仮リンク|ガイウス・ユリウス・ソリヌス|en|Gaius ローマの著述家ガイウス・ユリウス・ソリヌス(Gaius Julius Solinus|label=ソリヌス}}(3世紀)は、フェニックスが住むのはアラビアだとし、その羽毛や羽根の色合いの豪華さを記述している。またソリヌスは、エジプトでフェニックスの1羽が捕まり、クラウディウス皇帝時代のローマに運ばれて多くの人が見物した旨を記述しているSolinus)(3世紀)は、フェニックスが住むのはアラビアだとし、その羽毛や羽根の色合いの豪華さを記述している。またソリヌスは、エジプトでフェニックスの1羽が捕まり、クラウディウス皇帝時代のローマに運ばれて多くの人が見物した旨を記述している<ref name="松平p187" />。
2世紀から4世紀にかけて成立した『[[フィシオロゴス]]』でのフェニックスは2世紀から4世紀にかけて成立した『フィシオロゴス』でのフェニックスは<ref name="松平p188" />、500年ごとに、芳香を羽根いっぱいに持ってヘリオポリスの神官の元へ行き、祭壇の炎の中で焼死する。そして翌日その場所に生じた虫が、3日目には元のフェニックスの姿にまで育ち<ref name="アランp46" /><ref name="松平p188" />、神官に挨拶をしてから故郷へ飛んでいく、とされている。その外観は、羽根や頭部や脚に宝石や装飾具が着いているとされている<ref name="松平p188" />。
フェニックスの寿命については『フィシオロゴス』をはじめ多くの人が500年だとしているが、プリニウスやソリヌスは540年だとし、タキトゥスは1461年だとした<ref name="松平p188" />。タキトゥスの意見は、恒星[[シリウス]]が日の出の直前に昇る日とエジプトで新年の始まる日とが同じになる周期に基づいている。タキトゥスの意見は、恒星シリウスが日の出の直前に昇る日とエジプトで新年の始まる日とが同じになる周期に基づいている<ref name="アランp46" />。
[[ファイル:Phoenix rising from its ashes.jpg|thumb|right|200px|『{{仮リンク|アバディーン動物寓意集|en|Aberdeen Bestiary}}』の中に描かれたフェニックス<ref name="松平p188" />。]][[ファイル:Phoenix detail from Aberdeen Bestiary.jpg|thumb|200px|right|同じく『アバディーン動物寓意集』でのフェニックス。]] 自ら焼死したのちに蘇るという伝説は、エジプト神話をルーツとしながらもギリシア・ローマの著述家によって作られたものである<ref name="松平p189" />。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿が[[硬貨|コイン]]や[[モザイク画]]にあしらわれるようになった。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿がコインやモザイク画にあしらわれるようになった<ref name="ビーダーマンp362" />。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスはキリストの復活を象徴するものとなった。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスは'''キリストの復活を象徴するもの'''となった<ref name="アランp46" /><ref name="ビーダーマンp362" />。『フィシオロゴス』では、創造主を崇めることもないこの鳥さえ死から蘇るならば神を崇める我々が復活しないはずがない、といった内容の文言が書かれた<ref name="ビーダーマンp362" />。キリスト教徒はこの鳥を再生のシンボルとみなした<ref name="松平p189" />。10世紀成立の『[[エクセター本|エクセター写本]]』に収録された。10世紀成立の『エクセター写本』に収録された<ref name="松平p189" />、8世紀に作られた詩<ref name="水野p56">{{Cite journal|和書|author=[[水野知昭]] |title=, 不死鳥の歌なんか聞こえない : 海のかなたの楽園と古ゲルマンの選民思想 |url=, https://hdl.handle.net/10091/667 |journal=, 人文科学論集 文化コミュニケーション学科編 |publisher=, 信州大学人文学部 |date=, 2003-03-14 |volume=, 37 |pages=, 45-70 |70p , naid=:110004625076 |, ISSN=:13422790 |accessdate=, 2022-03-20 |ref=harv }} , p.56 より</ref>「{{仮リンク|フェニックス 「フェニックス (古英語詩)|en|The (The Phoenix (Old English poem)|label=フェニックス}}」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている{{refnest|group)」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている<refgroup="注釈"|この古英語詩は、4世紀のローマの著述家の[[ルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス|ラクタンティウス]](240年頃 >この古英語詩は、4世紀のローマの著述家のルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス(240年頃 - 320年頃)<!--松平 (2005) p.189の「テクタンティウス(245-315)」と同一人物か?-->による詩「不死鳥についての歌」(de Ave Phoenice) に基づいている</ref><ref name="松平p189" /><ref name="水野p56" />。}}<ref name="松平p189" />。こうしたこともあって、こんにちに至るまで、不死鳥=フェニックスのイメージが多くの人々に受け入れられている<ref name="松平p189" />([[#現代におけるフェニックス]]も参照)。
フェニックスは中世や近世の旅行記にもたびたび登場している<ref name="松平p189" />。[[ジョン・マンデヴィル]]による『[[東方旅行記|マンデヴィルの旅行記]]』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること<ref>{{Cite journal|和書|author=大沼由布 |title=『マンデヴィルの旅行記』と「装置」としての語り手 |url=https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013273 |journal=同志社大学英語英文学研究 |publisher=同志社大学人文学会 |year=2013 |month=mar |issue=91 |pages=1-18 |naid=110009614600 |doi=10.14988/pa.2017.0000013273 |issn=0286-1291|accessdate=2020-09-14 }}</ref>や、[[クジャク|孔雀]]のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されている<ref name="松平p189" />。また中世の{{仮リンク|聖務日課祈祷書|en|Breviary}}や『[[動物寓意譚|動物寓話集]]』でもしばしば言及された<ref name="ローズp359" />。
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