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1,240 バイト追加 、 2022年3月31日 (木) 13:10
=== 伝承の成立が比較的新しい、と感じる点について ===
 物語には「八面大王を倒すには三十三節のヤマドリの尾羽が必要である」とされているものがあり、それを「助けて貰った恩返し」として「天人女房」風のヤマドリの化身の妻が提供した。しかし、提供した妻は(それが原因で?)失踪した、という筋書きのものがある。しかし、尾羽が長いヤマドリは「'''雄'''」であって、雌ではないので、まず「伝承的」にその点に矛盾を感じる。神話を起源にした古い伝承は、「性差」というものは重要な要素であり、「羽衣を隠される天人は女性である」というような一定のパターンが存在する。西欧の伝承では、妻が異類なのではなく、夫が異類の動物である場合には、姿そのものを見てはならない、という禁忌や、被っていた動物の皮を捨て去ってしまうことが物語の次の展開に繋がるものはあるが、広く世界を見回しても、男性の天人が女性に羽衣を奪われて、無理矢理夫にされる、というような話はまずないのではないだろうか。つまり、「雄のヤマドリの尾羽が必要なのに、雌(女性)が自己犠牲的に尾羽を提供する」という筋書きに「そもそもそれは雌のヤマドリのものではない(どこから盗んできたのか?)。」と感じてしまい、美談とはなり得ないような矛盾を感じてしまうのである。ヤマドリは雌雄の姿の差がはっきりしている鳥なので、いくら昔の人でも雄雌の区別がつかなかった、ということもあり得ないのではないだろうか。
 
 また、ヤマドリの妻に関しては、
 
* 「罰を受ける女神」のように、尾羽を提供したことがダメージとなって失踪の原因となった、というパターン、が根底にあり
** 「鶴女房」のように禁忌を破ったことが失踪の原因となっていない。
** むしろヤマドリが「公共の福祉」のために自ら犠牲を払った。
 
という形式となっている。社会の形態が未成熟な古い時代の神話は、人身御供が植物に化生するハイヌウェレ神話のように、直接的な豊穣に結びつく物が多い。「公共の福祉」のために誰かが犠牲となる、という思想はそれだけ社会が発展し複雑化してから誕生した思想といえる。「妻」という立場の女性にそのような「犠牲」が求められる、というのは、ローマという国家の妻となった「'''ウェスタの巫女'''」を彷彿とさせる思想であるので、日本の伝承としては、古くは「橋姫」に繋がる思想であると思うが、物語的なバリエーションに一つとして成立した時代はそれほど古いものではないのではないだろうか。
== 参考文献 ==

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