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、 2024年12月28日 (土) 15:00
'''ヴァルナ'''(वरुण {, Varuṇa)は、古代インド・イランの神であり、ミトラとならぶ最高神でもある。ミトラとともに太古の'''アスラ'''族、アーディティヤ神群を代表した神である<ref name="菅沼編p71">菅沼編 1985] p. 71.</ref>。
== インド ==
ヴァルナの起源は古く、紀元前14世紀頃のミタンニ・ヒッタイト条約文には、ミトラ神と共にヴァルナ神の名があげられている<ref name="菅沼編p71" />(条約=国家間の契約ということから)。
しかし[[ヴェーダ]]の時代にはヴァルナの地位は下がり始めており、[[インド神話]]においても[[インドラ]]のように人々に親しまれる神ではなくなっていた<ref>[[#エリアーデ,松村訳|エリアーデ,松村訳]], p. 38.(第37章 66 ヴァルナ - 世界の王にして「呪術師」、「リタ」と「マーヤー」)</ref>。
『[[リグ・ヴェーダ]]』などでは、雷神インドラ、火神[[アグニ]]とともに重要な位置に置かれ、[[天空神]]、司法神(=契約と正義の神)、水神などの属性をもっていたが、この段階ですでに[[ブラフマー]]によって始源神としての地位を奪われていた。
[[プラーナ文献]]においては8つの方角のうち西を守る守護神とされた<ref name="菅沼編p72">[[#菅沼編 1985|菅沼編 1985]], p. 72.</ref>。
一方で、ヴァルナと水との関係性は強まっていき、やがては水の神、海上の神という位置付けが与えられることとなった<ref name="菅沼編p72" />。また、ヴァルナはしばしば[[ヘビ|蛇]]とも関連づけられた。『[[マハーバーラタ]]』の中では[[ナーガ]]達が暮らす海のあるじだとも、ナーガ達の王だとも呼ばれている。アヒ蛇や[[ヴリトラ]]と同一視されることもあった。ヴァルナは『リグ・ヴェーダ』(IX・73・3)で「海を隠した」とされているが、ヴリトラも同様に水を閉じ込めており、これはどちらも原初の水であった<ref>[[#エリアーデ,松村訳|エリアーデ,松村訳]], pp. 40-41.(第37章 66)</ref>。
== 仏教・神道への影響 ==
仏教に採り入れられた際には水神としての属性のみが残り、仏教における[[十二天]]の一つで西方を守護する「[[水天]]」となった<ref name="松村2013p103">[[#松村 2013|松村 2013]], p. 103.</ref><ref name="菅沼編p72" />。
日本では各地の「[[水天宮]]」はこの「[[水天]]」(=ヴァルナ)を祀ったものだったが、現在の各地の水天宮の祭神は[[天之御中主神]]とされている。これはヴァルナ神の元々の神格が最高神、始源神だったこととは特に関係はなく、偶然である。
== イラン ==
古代[[イラン]]では、インドの[[デーヴァ]](神々)のうちインドラら戦士機能を備えた神は[[ダエーワ]](悪魔)とみなされたが、ヴァルナらアスラに由来する神々は神とみなされた<ref>[[#エリアーデ,松村訳|エリアーデ,松村訳]], p. 213.(第13章 105 アケメネス朝の宗教)</ref>。ヴァルナに対応するのは[[アフラ・マズダー]]で、これらは起源が同じと考えられている<ref name="菅沼編p71" /><ref name="松村2013p103" />。『[[アヴェスター]]』にはヴァルナは出てこないが、ミスラと並んで現れる「アフラ」をアフラ・マズダーでなく水神[[アパーム・ナパート]]のこととして、インドのヴァルナに対応させる説がある<ref>{{cite book|author=Mary Boyce|chapter=APĄM NAPĀT|title=[[イラン百科事典]]|year=2011|volume=II Fasc. 2|pages=148-150|url=http://www.iranicaonline.org/articles/apam-napat}}</ref>。
== ヴァルナに由来する名称 ==
[[太陽系外縁天体]]の小惑星[[ヴァルナ (小惑星)|ヴァルナ]]の名称はヴァルナ神に由来する。また、かつて[[東日本フェリー]]が運航していた[[フェリー]][[ばるな]]の名称もこれに由来する。
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |last=エリアーデ |first=ミルチア |authorlink=ミルチャ・エリアーデ |others=[[松村一男]]訳 |title=世界宗教史2 - 石器時代からエレウシスの密儀まで(下) |publisher=[[筑摩書房]] |series=[[ちくま学芸文庫]] |date=2000-04 |isbn=978-4-480-08562-7 |ref=エリアーデ,松村訳 2000 }}
* {{Cite book |和書 |editor=菅沼晃|editor-link=菅沼晃 |title=インド神話伝説辞典 |publisher=[[東京堂出版]] |date=1985-03 |isbn=978-4-490-10191-1 |ref=菅沼編 1985 }} ※特に注記がなければページ番号は本文以降
* {{Cite book|和書 |author=松村一男|authorlink=松村一男 |title=神の文化史事典 |editor=松村一男他 |publisher=[[白水社]] |date=2013-02 |chapter=ヴァルナ |page= 103 |isbn=978-4-560-08265-2 |ref=松村 2013 }}
== 関連項目 ==
* [[八束水臣津野命]]
* [[アペ・コペン]]
== 脚注 ==
{{デフォルトソート:うあるな}}
[[Category:インド神話]]
[[Category:イラン神話]]
[[Category:水神]]
[[Category:天空神]]
[[Category:アスラ]]
[[Category:司法神]]