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、 2024年12月7日 (土)
'''アドーニス''' ('''Ἄδωνις''', ラテン文字表記:''Adōnis'')は、ギリシア神話に登場する、美と愛の女神アプロディーテーに愛された美少年。フェニキアの王キニュラースとその王女であるミュラーの息子<ref name="hakusuisha41">『神の文化史事典』41頁(「アドニス」の項)。</ref>。
長母音を省略して'''アドニス'''とも表記される<ref name="hakusuisha41" /><ref name="harashobo14">『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』14頁(「アドニス」の項)。</ref>。彼の名は、美しい男性の代名詞としてしばしば用いられる<ref>『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』15頁(「アドニス」の項)。</ref>。
== 解説 ==
アドーニスという名はセム語起源で、旧約聖書のマソラ学者による読みであるアドナイ(ヤハウェの呼び名「主」)と関係があるとされる。さらに神話の舞台となる場所がギリシア以外であり、元来は非ギリシア系の神話の人物である<ref name="hakusuisha41" />。元はビュブロスとパポスにおいて信仰されていた<ref name="harashobo14" /><ref>『世界神話辞典』27頁(「アドーニス」の項)。</ref>フェニキア神話の植物の神であった。アドーニスは収穫の秋に死んで、また春に甦って来る。アプロディーテーが冥府の女王ペルセポネーとアドーニスを頒つのは、植物の栄える春夏と、枯れて死ぬ冬との区別である<ref>呉茂一『ギリシア神話 上巻』新潮社、1956年、140頁。</ref>。
== 神話 ==
{{出典の明記|date=2015年2月|section=1}}
[[ファイル:Venus and Adonis by Titian.jpg|thumb|250px|[[ティツィアーノ・ヴェチェッリオ]]の1554年の絵画『[[ヴィーナスとアドニス (ティツィアーノ)|ヴィーナスとアドニス]]』。[[プラド美術館]]所蔵。]]
キニュラースの家系は代々、アプロディーテーを信仰していた。しかし、王女ミュラーはとても美しく、一族の誰かが「ミュラーは女神アプロディーテーよりも美しい」と言ってしまった。これを聞いたアプロディーテーは激怒し、ミュラーが実の父であるキニュラースに恋するように仕向けた。父親を愛してしまい、思い悩んだミュラーは、自分の[[乳母]]に気持ちを打ち明けた。
彼女を哀れんだ乳母は、祭りの夜に二人を引き合わせた。顔を隠した女性が、まさか自分の娘だとは知らないキニュラースは、彼女と一夜を共にした。しかし、その後、明かりの下で彼女の顔を見たキニュラースは、それが自分の娘のミュラーだと知ってしまった。怒った彼はミュラーを殺そうとしたが、彼女は[[アラビア半島|アラビア]]まで逃げ延びた。
彼女を哀れに思った神々は、ミュラーをミルラ([[没薬]])の木に変えた。やがて、その木に[[イノシシ|猪]]がぶつかり、木は裂け、その中からアドーニスが生まれた。そのアドーニスにアプロディーテーが恋をした。やがてアプロディーテーは赤ん坊のアドーニスを箱の中に入れると、冥府の王[[ハーデース]]の妻で、冥府の女王の[[ペルセポネー]]の所に預けた。彼女はペルセポネーに、けっして箱の中を見るなと注意しておいた。しかし、ペルセポネーは好奇心に負け、箱を開けてしまった。すると、その中には美しい男の赤ん坊のアドーニスが入れられていて、彼を見たペルセポネーもアドーニスに恋してしまった。こうしてアドーニスはしばらくペルセポネーが養育することになった。
アドーニスが少年に成長し、アプロディーテーが迎えにやって来た。しかし、ペルセポネーはアドーニスを渡したくなくなっていた。2人の女神は争いになり、ついに天界の裁判所に審判([[ゼウス]]あるいは[[カリオペー]])を委ねることにした。その結果、1年の3分の1はアドーニスはアプロディーテーと過ごし、3分の1はペルセポネーと過ごし、残りの3分の1はアドーニス自身の自由にさせるということとなった。
しかし、アドーニスは自分の自由になる期間も、アプロディーテーと共に過ごすことを望んだ。ペルセポネーは、アドーニスのこの態度に、大いに不満だった。
アドーニスは[[狩り]]が好きで、毎日狩りに熱中していた。アプロディーテーは狩りは危険だから止めるようにといつも言っていたが、アドーニスはこれを聞き入れなかった。アドーニスが自分よりもアプロディーテーを選んだことが気に入らなかったペルセポネーは、アプロディーテーの恋人である軍神[[アレース]]に、「あなたの恋人は、あなたを差し置いて、たかが人間に夢中になっている」と告げ口をした。これに腹を立てたアレースは、アドーニスが狩りをしている最中、猪に化けて彼を殺してしまった。
アプロディーテーはアドーニスの死を、大変に悲しんだ。やがてアドーニスの流した血から、[[アネモネ]]の花が咲いたという。
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書
|editor = [[松村一男]]、平藤喜久子、山田仁史編
|date = 2013-02
|title = 神の文化史事典
|publisher = [[白水社]]
|isbn = 978-4-560-08265-2
}}
* {{Cite book|和書
|others = マルタン, ルネ監修、松村一男訳
|date = 1997-07
|title = 図説ギリシア・ローマ神話文化事典
|publisher = [[原書房]]
|isbn = 978-4-562-02963-1
}}
* {{Cite book|和書
|last = コッテル
|first = アーサー
|authorlink = アーサー・コットレル
|others = [[左近司祥子]]、[[宮元啓一]]、瀬戸井厚子、伊藤克巳、山口拓夢、[[左近司彩子]]訳
|title = 世界神話辞典
|date = 1993-09
|publisher = [[柏書房]]
|isbn = 978-4-7601-0922-7
}}
== 関連項目 ==
== 脚注 ==
<references />
{{デフォルトソート:あとにす}}
[[Category:ギリシア神話]]
[[Category:風神]]
[[Category:人身御供]]
[[Category:陰]]