=== 龍岩神社の伝承 ===
'''干ばつ'''を起こす悪しき蛇神と対立する女神は、「[[燃やされた女神]]」・「[[吊された女神]]」の双方に共通する性質である。」・「[[養母となる女神]]」の三者に共通する性質である。
「[[燃やされた女神]]」の場合、対立する相手は「'''[[炎帝型神]]'''」となり、これを倒すために'''[[黄帝型神]]'''の支援を受けたり、逆に'''[[黄帝型神]]'''を援助するのが女神の役割となる。本神話では、女神は[[八束水臣津野命]]に支援を求める。[[八束水臣津野命]]が'''[[黄帝型神]]'''に相当する。その結果、悪神は倒され、[[八束水臣津野命]]は女神の家に招かれるのだから、この部分は'''婚姻譚'''の一種といえる。
「[[吊された女神]]」・「[[養母となる女神]]」の場合、対立する相手は[[祝融型神]]となり、神話的に女神と干ばつの神は、'''兄妹'''や'''夫婦'''の関係として語られることが多い。出雲を舞台として
: [[肥長比売]]という女神が疫神の性質を持つ[[誉津別命]]という神と婚姻後、これを追い回した。
という神話が古事記に見えるので、おそらく元はこれに近い伝承が'''石見天豊足柄姫命'''と'''干ばつの蛇神'''との間にあって、女神が疫神を追い回す、というよりは、共に戦って相打ちになった、という神話があったのではないか、と考える。川の中に「夫婦石」があったりするのは、'''夫婦が戦って相打ちし、共に亡くなって石になった'''、という神話の名残かと思う。
近い話に、長野県篠ノ井有旅の'''犬石'''にまつわる伝承がある。
: とある犬がいて、これが猛り狂い人々に害をなした。そこで産土神さまがあらわれ犬を諭された為、犬は改心して石と化した。産土神さまは犬に追われ里芋で滑りゴマで目を突いた。<ref>[http://oinuwolf.blog.fc2.com/blog-entry-810.html 長野県長野市篠ノ井有旅の犬石]、狼やご神獣の、お姿を見たり聞いたり民話の舞台を探したりの訪問記 -主においぬ様信仰ー(最終閲覧日:24-11-26)</ref><ref>長野市立博物館だより、第12号、1988-10-1</ref>
こちらでは、産土神(おそらく女神)が疫神である犬神を「諭した」とあるが、犬が石に変じてしまっているのだから、本来は殺してしまった話と思われる。こちらの話では、女神は死んではいないが、疫神と戦ったためか傷つけられている。女神の傷が深ければ、亡くなってしまうという展開にもなり得よう。篠ノ井有旅は古代において布施氏という氏族の活動範囲であったので、女神としては彼らの女神であった[[伊豆能売]]が想定される。
=== 付加された八束水臣津野命 ===
そして[[八束水臣津野命]]をもてなすための宴の後、女神の相、[[八束水臣津野命]]が入れ替わる神話が混在するように思う。この宴を、女神が主催した時点で彼女の相に「[[吊された女神]]」が混在してくる。なぜなら神話的には、'''宴は「[[吊された女神]]」が両親を焼き殺すために主催するもの'''だからだ。「[[吊された女神]]」が混在してくると、まず[[黄帝型神]]の[[八束水臣津野命]]には「父親」としての性質が混在してくる。本来、[[八束水臣津野命]]と[[石見天豊足柄姫命]]・母の婚姻があって、その後[[石見天豊足柄姫命]]・娘は生まれるはずなのだが、'''婚姻譚と、娘に殺される話が同時並行して語られている'''のである。