「'''同じ名前で違う神'''」群を挙げていくと、これまた大量に出てくる神なので、まずは名前の'''「H+M」という子音が「K+M」という子音と交通性がある'''、ということを前提として書き出してみる。すると、ヘルメース(ギリシア)、クロノス(ギリシア)、クマルビ(ヒッタイト)、ハモン(カルタゴ)、アメン(エジプト)、クヌム(エジプト)、エンキ(メソポタミア)、フンババ(メソポタミア)、ヘミッツ(カフカス・オセット族)、クンバン(エラム)、ハヌマーン(インド)と、軽く挙げただけでもどんどん出てくる。おそらく、この系統の神として、ヘレネスの神がクロノスであり、ギリシャ先住民の神がヘルメースだったので、ギリシャ神話をまとめるときに、クロノスは上位の神、ヘルメースは下位の神にされてしまったのだろう。
余談的になるけれども、「K+M」という子音の名を持つ「女神」といえる存在も、少数だけれどもある。いずれも強烈な個性を持つので挙げてみる。クリュタイムネーストラー(ギリシア、アガメムノーンの妻)、クリームヒルト・グズルーン(ドイツ・北欧、ジークフリートの妻)、グィネヴィア(ブリテン、アーサーの妻)、グラーニア(アイルランド、フィン・マックールの妻)である。いずれも「M(N)」という子音の名を持つ「女神」といえる存在も、少数だけれどもある。いずれも強烈な個性を持つので挙げてみる。クリュタイムネーストラー(ギリシア、アガメムノーンの妻)、クリームヒルト・グズルーン(ドイツ・北欧、ジークフリートの妻)、グィネヴィア(ブリテン、アーサーの妻)、グラーニア(アイルランド、フィン・マックールの妻)である。いずれも「'''王侯の妻であり姉妹'''」だ。そして名高いハイヌウェレとなる。
クリュタイムネーストラーは娘の処遇に怒り夫のアガメムノーンを殺す、クリームヒルトは夫の処遇に怒り兄弟のハゲネとグンテルを殺す、グィネヴィアは若い騎士が好きになって夫のアーサーを死に追いやる。グラーニアはグィネヴィアの逆で、愛人の若い騎士と共に死を選ぶ。父系社会において、男性顔負けの強面な「女神」たちなのだけれども、その名前の類似性と、殺された相手の名前の類似性から、元は同じ伝承から発生した女神群と考えられる。イーピゲネイアとハイヌウェレ神話の相関からいえば、ハイヌウェレ神話では「殺される娘神」が「H+M」の女神だったのに、イーピゲネイアでは、これが「母女神」に変更されているだけのこと、と分かる。ニーベルンゲンのクリームヒルトは露骨に殺されはしないけれども、妻としての社会的立場をグンテルに恥をかかされて傷つけられたも同然なので、これを「殺されたも同然」と解釈すれば、クリームヒルトは「殺される女神」でもあるし「復讐する女神」でもある、ということになる。グィネヴィアとグラーニアは、男として役にもたたなくなったじいさんの妻でいることは女として死んだも同然、と言い出すとだんだん男性に失礼な女神になりすぎてる気もするけれども、神話的な性格はそのようなものだ。