イナンナ/イシュタルの最も有名な神話は、姉のエレシュキガルが支配する古代メソポタミアの冥界への降臨とそこからの帰還を描いた物語である。エレシュキガルの玉座に着いた彼女は、冥界の7人の審判によって有罪とされ、死に追いやられる。3日後、ニンシュブルはすべての神々にイナンナを連れ戻すように懇願する。エンキだけは、イナンナを救うために、性のない2人の人間を送り込んだ<ref group="私注">アッティスのように去勢したもの、あるいは異性の扮装をした者を連想させる。</ref>。彼らはイナンナを冥界から追い出すが、冥界の守護者であるガラは彼女の夫ドゥムジをイナンナの代わりとして冥界に引きずり下ろす。やがてドゥムジは1年の半分を天に帰ることを許され、姉妹のゲシュティアンナは残りの半分を冥界にとどまり、季節が循環することになる。
== 呼称 ==
その名は「nin-anna」(天の女主人)を意味するとされている<ref name="#1">アンソニー・グリーン監修『メソポタミアの神々と空想動物』p.24、山川出版社、2012/07</ref>。
ウルクにあったイナンナのための神殿/寺院の名は「E-ana」(エアンナ、「天([[アヌ (メソポタミア神話)|アヌ]])の家」の意味)であった。
イナンナのシュメール語の別名は「nin-edin」(エデンの女主人)、「Inanna-edin」(エデンのイナンナ)であった。彼女の夫である[[タンムーズ|ドゥムジ]]のシュメール語の別名は「{mulu-edin」(エデンの主)であった。
アッカド帝国(Akkadian Empire|en)期には「[[イシュタル]]」(新アッシリア語: DINGIR INANNA)と呼ばれた。[[イシュタル]]はフェニキアの女神[[アスタルト|アスタルテ]]やシリアの女神[[アナト]]と関連し、古代ギリシアでは[[アプロディーテー]]と呼ばれ、ローマのヴィーナス([[ウェヌス]])女神と同一視されている<ref name="#1"/>。
== 語源 ==