-->
== 弓矢と宗教他 ==ヒンドゥー教と同様に密教・仏教にも弓矢を持つ神々がいるが、起源はヒンドゥー教にあるか、またはヒンドゥー教の神と習合させた神である。ギリシャ神話の弓矢を持つ神々とヒンドゥー教の弓矢を持つ神々は幾つかの共通点がある。 日本においては弓矢の神ではなく「弓矢神」という一つの単語になっていて、応神天皇(八幡神)のことでもある。応神天皇を祀っている八幡神社の数は、稲荷神社に次いで全国第2位で広く信仰されてきた。また弓矢や運命や確率に関わり幸運を願う時には「八幡」という語が使われてきた歴史があり、八幡は祈願と弓矢の意味が一体となす語として、射幸心という語の語源ともなった事由である。これらのことからも古くから弓矢が信仰の対象となってきたことが窺える。また八幡神は八幡大菩薩としても夙(つと)に知られ、「南無八幡」と言う慣用句からも窺い知ることができる。明治政府によって神仏分離され、八幡大菩薩は一度消滅したが庶民は八幡大菩薩も変らず信仰し、射幸心に係わる物事において、現在でも八幡大菩薩を用いて表現されることは多い。 === 神々と弓矢 ====
*『古事記』・神道
** 応神天皇 - 『古事記』の品陀和氣命(応神天皇)の別名は、大鞆和気命とありその由来は誕生時に腕の肉が鞆のようになっていたことによるという。そのため弓矢神として現在も様々な神社で祀られている。
; 弓を引く
: 反抗や謀反(むほん)や楯突くことだが、本来は鳴弦のことで弓の弦を引いて鳴らすことにより悪霊や魔や穢れを祓う行為。
== 弓矢と文化 ==
=== 弓矢に纏わる語 ===
弓矢・弓箭
; 弓矢神(ゆみやがみ)
: 弓矢を司る神。武の神・軍神
; 弓箭組(ゆみやぐみ・きゅうせんぐみ)
: 奈良時代の丹波国南桑田と丹波国船井に発足したといわれる朝廷の警護をした弓矢に秀でた者の集団。
; 弓矢取り(ゆみやとり)
: 弓矢を用いること。武士。
; 弓矢取る身(ゆみやとるみ)
: 武人である我が身。武士。
; 弓矢台
: 調度掛のこと。江戸時代に弓矢を飾った台。
; 弓矢の家(ゆみやのいえ)
: 弓馬の家とも言う。弓矢の技術に長けた代々続く家系。武家、武門。
; 弓箭之士( ゆみやのし・きゅうせんのし)
: 武士、弓兵。
; 弓矢の長者
: 弓矢の達人、弓術に長けた人。弓矢の家の長、弓術の流派の開祖。武家の棟梁。
; 弓矢の道(ゆみやのみち)
: 弓馬の道とも言う。弓矢の技術、弓術。弓矢の技を身につける過程での道義や信条、弓道。武道、武士道。
; 弓矢の冥加(ゆみやのみょうが)
: 弓矢に宿る神仏の加護。弓矢に携わる者が感じる果報。武士の幸せ。
; 弓矢八幡(ゆみやはちまん)
: 八幡神、八幡大菩薩を指し同義語として南無八幡がある。武士が何かに願いを込めたり誓約する時の言葉。
; 弓矢槍奉行(ゆみややりぶぎょう)
: [[江戸幕府]]の役職で弓矢と槍の製造、監守を司ったところ。
; 弓折れ矢尽きる
: 刀折れ矢尽きると同義語。戦う手段が尽きてどうしようもない状態。打つ手がないこと。
=== 弓矢に纏わること ===
[[File:Double-alaskan-rainbow.jpg|right|170px|thumb|二重に架かるレインボウ<ref>(中程度の大きさ)[[W:Wrangell-St. Elias National Park|ランゲル・セント・エライアス国立公園]]:[[アラスカ州]]。</ref>]]
[[File:Eclipse20070304-2.JPG|right|170px|thumb|弓張り月・下弦の月]]
[[File:Yumitori-shiki.jpg|thumb|[[弓取式]](男女ノ里)|170px]]
*[[和文通話表]]で、「ゆ」を送る際に「'''弓矢のユ'''」という。
*レインボウ(英語の[[虹]])は rain(雨)をあらわす語と bow(弓)をあらわす語からできた語である。ヒンドゥー教の神話でも虹を弓に喩えている。
*[[満月]]→下弦の月→[[新月]]→上弦の月という、[[月]]の満ち欠けの周期の状態を表す語の、上弦・下弦とは弓に喩えた語である。または弓張り月(弓張月と表記した時は、伝承上の強弓のこと)ともいう。
*[[市]]や[[縁日]]や[[祭り]]などの[[射的]]も古くは弓矢で行われていた。また射的ではなく的矢(まとや)と呼ばれた。的矢や矢場を営む者を的屋(まとや)と呼び、後の[[露天商]]を生業とする的屋(てきや)になったと言われる。ちなみに「やばい」という乱暴な言葉は矢場(やば)で働くことが危険なことから派生した。的屋(てきや)などが使う隠語が昭和40年前後に若者を中心に広まったものである<ref name=yabai />。
*相撲用語として金星や黒星、白星などがあるが、的矢・的弓において的の最高位を金的と呼称し、的の中心を星という。また的は同心円状に白と黒に塗り分けられている。弓取り式の神事のほかに、[[京都府|京都]]の[[上賀茂神社]]では烏相撲という奉納相撲が行われており、土俵上で神職が烏(からす)になり、弓矢で追い回すという神楽の後、奉納相撲を行うというものや、地方の村祭りでは、相撲と弓矢を模した舞神楽を行うものもある。この様に相撲と弓矢には繋がりが見てとれる。
*[[千葉県]][[松戸市]]の[[矢切]]は、[[東京都]][[葛飾区]]の[[柴又帝釈天]]と「[[渡し船|渡し]]」という日本古来の[[和船]]による[[水上交通]]で結ばれていて、「[[矢切の渡し]]」としても有名だが、矢切地区は戦渦に巻き込まれたため、戦(いくさ)を憎んだ。そのため、「弓矢が無くなれば」との思いから、同地区を「矢喰い」や「矢切れ」と呼んだのが、矢切の地名の始まりだと伝えられている。また[[帝釈天]]は、ヒンドゥー教の虹の弓矢を持つ神、インドラのことでもある。
=== ギリシャ神話と星座と弓矢 ===
[[ファイル:Donato Creti, The Education of Achilles by Chiron.jpg|thumb|right|250px|<ref>題名''The Education of Achilles''作画Donato Creti, 1714年:ボローニャ美術館所蔵。</ref> 神々と弓矢を持つケイロンとクピド]]
[[ファイル:Albrecht Dürer 042.jpg|250px|thumb|<ref>[[アルブレヒト・デューラー]]画。</ref>[[ステュムパリデスの鳥]]を射るヘラクレス]]
上記の項目「神々と弓矢」以外の神ではないギリシャ神話における、弓矢と星座の両方に関係するものを記述する。
*[[星座]]の[[射手座]](いてざ)は、弓矢を持った[[ケンタウロス]](またはケンタウロス族の一人[[ケイローン|ケイロン]]のこと)で、ヘラクレスの矢によって死んだケイロンを、神々が惜しみ天に象ったといわれる。ケンタウロス族は粗暴で知恵がなく弓矢の技術は持たないが、ケイロンだけはアポロンから冷静さと知恵を、アルテミスから弓矢を学んだといわれ、その素養から神々に愛された。また射手座はサジタリウスと言い、ケイロンの番える(つがえる)矢を「サジタリウスの矢」と呼び様々なものの名称に使われている。
*[[オリオン座]]は、アルテミスがアポロンの策略によって騙され、自らの恋人の[[オーリーオーン|オリオン]]を弓矢で射抜いたため、オリオンは死に至り神々によって天空に星座として象られたものである。
*[[海蛇座]](うみへびざ)は「火矢」を用いたヘラクレスに倒されたヒュドラを象った星座である。
*[[ヘーラクレース|ヘラクレス]]が用いた弓矢を「ヘラクレスの矢」というが、これはアポロンからヘラクレスが授かった矢に、自身が倒した[[ヒュドラー|ヒュドラ]](ヒドラ)の毒を塗ったものである。そしてこの弓矢がケンタウロス族とヘラクレスの戦いに巻き込まれた[[ケイローン|ケイロン]](ケイローン)を死に追いやった原因でもある。後にこのヘラクレスの矢は、[[ピロクテーテース]]の手に渡り、[[トロイア戦争]]の終結に一役買うことになる。このことから「矢」を象った(かたどった)星座の[[矢座]](やざ)もあるが、これは[[ヘラクレス座]]のヘラクレスが放ったヘラクレスの矢とする説もある。
== 分類 ==
江戸時代、経済の発展により一般にも武芸は広まったが、明治維新からの武芸復興により更に門戸が開かれるようになった。
== 弓矢と文化 ==
=== 弓矢と宗教 ===
ヒンドゥー教と同様に密教・仏教にも弓矢を持つ神々がいるが、起源はヒンドゥー教にあるか、またはヒンドゥー教の神と習合させた神である。ギリシャ神話の弓矢を持つ神々とヒンドゥー教の弓矢を持つ神々は幾つかの共通点がある。
日本においては弓矢の神ではなく「弓矢神」という一つの単語になっていて、応神天皇(八幡神)のことでもある。応神天皇を祀っている八幡神社の数は、稲荷神社に次いで全国第2位で広く信仰されてきた。また弓矢や運命や確率に関わり幸運を願う時には「八幡」という語が使われてきた歴史があり、八幡は祈願と弓矢の意味が一体となす語として、射幸心という語の語源ともなった事由である。これらのことからも古くから弓矢が信仰の対象となってきたことが窺える。また八幡神は八幡大菩薩としても夙(つと)に知られ、「南無八幡」と言う慣用句からも窺い知ることができる。明治政府によって神仏分離され、八幡大菩薩は一度消滅したが庶民は八幡大菩薩も変らず信仰し、射幸心に係わる物事において、現在でも八幡大菩薩を用いて表現されることは多い。
=== 弓矢に纏わる語 ===
弓矢・弓箭
; 弓矢神(ゆみやがみ)
: 弓矢を司る神。武の神・軍神
; 弓箭組(ゆみやぐみ・きゅうせんぐみ)
: 奈良時代の[[桑田郡|丹波国南桑田]]と[[船井郡|丹波国船井]]に発足したといわれる朝廷の警護をした弓矢に秀でた者の集団。
; 弓矢取り(ゆみやとり)
: 弓矢を用いること。武士。
; 弓矢取る身(ゆみやとるみ)
: 武人である我が身。武士。
; 弓矢台
: [[調度掛]]のこと。江戸時代に弓矢を飾った台。
; 弓矢の家(ゆみやのいえ)
: 弓馬の家とも言う。弓矢の技術に長けた代々続く家系。[[武家]]、[[武門]]。
; 弓箭之士( ゆみやのし・きゅうせんのし)
: 武士、弓兵。
; 弓矢の長者
: 弓矢の達人、弓術に長けた人。弓矢の家の長、弓術の流派の開祖。武家の[[棟梁]]。
; 弓矢の道(ゆみやのみち)
: 弓馬の道とも言う。弓矢の技術、弓術。弓矢の技を身につける過程での[[道義]]や[[信条]]、弓道。武道、[[武士道]]。
; 弓矢の冥加(ゆみやのみょうが)
: 弓矢に宿る[[神仏]]の加護。弓矢に携わる者が感じる[[果報]]。武士の幸せ。
; 弓矢八幡(ゆみやはちまん)
: 八幡神、八幡大菩薩を指し同義語として南無八幡がある。武士が何かに願いを込めたり誓約する時の言葉。
; 弓矢槍奉行(ゆみややりぶぎょう)
: [[江戸幕府]]の役職で弓矢と槍の製造、監守を司ったところ。
; 弓折れ矢尽きる
: 刀折れ矢尽きると同義語。戦う手段が尽きてどうしようもない状態。打つ手がないこと。
{{main2|弓に纏わる語|弓 (武器)#弓に纏わる言葉|矢に纏わる語|矢#矢に纏わる言葉}}
=== 弓矢に纏わること ===
[[File:Double-alaskan-rainbow.jpg|right|170px|thumb|二重に架かるレインボウ<ref>(中程度の大きさ)[[W:Wrangell-St. Elias National Park|ランゲル・セント・エライアス国立公園]]:[[アラスカ州]]。</ref>]]
[[File:Eclipse20070304-2.JPG|right|170px|thumb|弓張り月・下弦の月]]
[[File:Yumitori-shiki.jpg|thumb|[[弓取式]](男女ノ里)|170px]]
*[[和文通話表]]で、「ゆ」を送る際に「'''弓矢のユ'''」という。
*レインボウ(英語の[[虹]])は rain(雨)をあらわす語と bow(弓)をあらわす語からできた語である。ヒンドゥー教の神話でも虹を弓に喩えている。
*[[満月]]→下弦の月→[[新月]]→上弦の月という、[[月]]の満ち欠けの周期の状態を表す語の、上弦・下弦とは弓に喩えた語である。または弓張り月(弓張月と表記した時は、伝承上の強弓のこと)ともいう。
*[[市]]や[[縁日]]や[[祭り]]などの[[射的]]も古くは弓矢で行われていた。また射的ではなく的矢(まとや)と呼ばれた。的矢や矢場を営む者を的屋(まとや)と呼び、後の[[露天商]]を生業とする的屋(てきや)になったと言われる。ちなみに「やばい」という乱暴な言葉は矢場(やば)で働くことが危険なことから派生した。的屋(てきや)などが使う隠語が昭和40年前後に若者を中心に広まったものである<ref name=yabai />。
*相撲用語として金星や黒星、白星などがあるが、的矢・的弓において的の最高位を金的と呼称し、的の中心を星という。また的は同心円状に白と黒に塗り分けられている。弓取り式の神事のほかに、[[京都府|京都]]の[[上賀茂神社]]では烏相撲という奉納相撲が行われており、土俵上で神職が烏(からす)になり、弓矢で追い回すという神楽の後、奉納相撲を行うというものや、地方の村祭りでは、相撲と弓矢を模した舞神楽を行うものもある。この様に相撲と弓矢には繋がりが見てとれる。
*[[千葉県]][[松戸市]]の[[矢切]]は、[[東京都]][[葛飾区]]の[[柴又帝釈天]]と「[[渡し船|渡し]]」という日本古来の[[和船]]による[[水上交通]]で結ばれていて、「[[矢切の渡し]]」としても有名だが、矢切地区は戦渦に巻き込まれたため、戦(いくさ)を憎んだ。そのため、「弓矢が無くなれば」との思いから、同地区を「矢喰い」や「矢切れ」と呼んだのが、矢切の地名の始まりだと伝えられている。また[[帝釈天]]は、ヒンドゥー教の虹の弓矢を持つ神、インドラのことでもある。
=== ギリシャ神話と星座と弓矢 ===
[[ファイル:Donato Creti, The Education of Achilles by Chiron.jpg|thumb|right|250px|<ref>題名''The Education of Achilles''作画Donato Creti, 1714年:ボローニャ美術館所蔵。</ref> 神々と弓矢を持つケイロンとクピド]]
[[ファイル:Albrecht Dürer 042.jpg|250px|thumb|<ref>[[アルブレヒト・デューラー]]画。</ref>[[ステュムパリデスの鳥]]を射るヘラクレス]]
上記の項目「神々と弓矢」以外の神ではないギリシャ神話における、弓矢と星座の両方に関係するものを記述する。
*[[星座]]の[[射手座]](いてざ)は、弓矢を持った[[ケンタウロス]](またはケンタウロス族の一人[[ケイローン|ケイロン]]のこと)で、ヘラクレスの矢によって死んだケイロンを、神々が惜しみ天に象ったといわれる。ケンタウロス族は粗暴で知恵がなく弓矢の技術は持たないが、ケイロンだけはアポロンから冷静さと知恵を、アルテミスから弓矢を学んだといわれ、その素養から神々に愛された。また射手座はサジタリウスと言い、ケイロンの番える(つがえる)矢を「サジタリウスの矢」と呼び様々なものの名称に使われている。
*[[オリオン座]]は、アルテミスがアポロンの策略によって騙され、自らの恋人の[[オーリーオーン|オリオン]]を弓矢で射抜いたため、オリオンは死に至り神々によって天空に星座として象られたものである。
*[[海蛇座]](うみへびざ)は「火矢」を用いたヘラクレスに倒されたヒュドラを象った星座である。
*[[ヘーラクレース|ヘラクレス]]が用いた弓矢を「ヘラクレスの矢」というが、これはアポロンからヘラクレスが授かった矢に、自身が倒した[[ヒュドラー|ヒュドラ]](ヒドラ)の毒を塗ったものである。そしてこの弓矢がケンタウロス族とヘラクレスの戦いに巻き込まれた[[ケイローン|ケイロン]](ケイローン)を死に追いやった原因でもある。後にこのヘラクレスの矢は、[[ピロクテーテース]]の手に渡り、[[トロイア戦争]]の終結に一役買うことになる。このことから「矢」を象った(かたどった)星座の[[矢座]](やざ)もあるが、これは[[ヘラクレス座]]のヘラクレスが放ったヘラクレスの矢とする説もある。
== 脚注 ==