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、 2022年12月15日 (木) 22:58
'''ウルスラグナ'''(Vərəθraγna)とは、[[ゾロアスター教]]において崇拝される[[神|英雄神]]。
== 概要 ==
ウルスラグナの名は[[勝利]]を意味し、[[アヴェスター語]]形で、[[パフラヴィー語]]では'''ワルフラーン'''(Varhrān)といい、「障害を打ち破る者」を意味する。他の別名にアルタグン、ワフラームやバフラームがある。
語源的に[[インド神話]]の神[[インドラ]]の形容語[[インドラ|ヴリトラハン]]と共通しており<ref name="Okada"> [[岡田明憲]]、松枝到(編)「古代イランの動物変身」『象徴図像研究:動物と象徴』 言叢社 2006 ISBN 4862090079 pp.101-114.</ref>、ウルスラグナの成立に関しては、イランでインドラが悪魔の地位に降ろされた結果、形容語だけが独立した神格として崇拝され続けたという説と、イランに存在したウルスラグナの原型となる神とインドラが[[ヴェーダ]]が成立する際に合体したという説がある<ref name="Okada"/>。
ゾロアスター教神学に於いては中級神[[ヤザタ]]に分類される。男性神格としてイメージされ、特に戦争の勝利を司る神で、[[虚偽]]者や邪悪なる者に罰を与え自らを崇拝するものには勝利を与えるという。
戦う両軍の間に四枚の翼を広げてウルスラグナが降り立った時は、最初にこの神を崇めた方が勝利をおさめるといわれる。
またペルシア7曜神では[[火星]]神とされる。
教祖[[ゾロアスター]]自身が説いたとされる『ガーサー』には、ウルスラグナは特定の神格としては登場していない。[[ヘレニズム]]色の強い[[パルティア王国]]の時代になると、[[ギリシア神話]]の[[ヘラクレス]]と同一視され盛んに信仰された<ref name="Okada"/>。
[[サーサーン朝]]ペルシアでは帝王の性格を持つ戦勝の神として熱心に崇拝され、バフラームの名を持つ王も数名現れている<ref name="Okada"/>。
その初代皇帝[[アルダシール1世]]は、自らウルスラグナの聖火を建立し、以後、サーサーン歴代の皇帝達が参詣した。
また、この時代から現在に至るまでウルスラグナは[[道路]]や旅程を守る神として信仰されている<ref name="Okada"/>。
アルメニアの民族的英雄神[[ヴァハグン]](Vahagn)はウルスラグナが起源で、怪物[[ヴィシャップ]]を殺す。
== 10の化身 ==
『ウルスラグナ祭儀書』によれば、ウルスラグナはアワタールという[[変身]]に長け、10種の姿をとってゾロアスターの前に現れたとされる。
それによりウルスラグナは変身して戦うといわれ、特に力強い[[イノシシ]]の姿をとって戦場で[[ミスラ]]を先導する姿は、宗教画などに好んで描かれた。
また、鳳(おおとり)の時は霊力に優れ、この羽根を持てば災難除けの呪いになった。この羽根を身体に擦り付けると、悪い[[呪い]]を術者に跳ね返す事が出来るといわれる。
# 強い風
# 黄金の角を持つ雄[[牛]]
# 黄金の飾りをつけた[[白馬]]
# 鋭い爪と長い毛を持つ俊足の[[駱駝]]
# 鋭い牙をした野[[猪]]
# 十五歳の輝かしい若者
# 鳳(おおとり)
# 美しい野生の雄[[羊]]
# 鋭い角を持つ[[山羊]]
# 黄金の刃のある剣を持つ人間
これは[[ヴィシュヌ]]の10の[[アヴァターラ]]に対応するという説がある<ref>『世界神話大事典』 {{要ページ番号|date=2015-11-03}}</ref>。
両者の変化する動物には猪を除いて共通するものが無いが、ゾロアスター教では善悪二元論によって善い動物・悪い動物が規定されていることと、ウルスラグナの成立に[[オリエント]]文化の影響があったことなどが背景として考えられる<ref name="Okada"/>。
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |editor=イヴ・ボンヌフォワ編 |others=[[金光仁三郎]]主幹、安藤俊次ほか共訳 |title=世界神話大事典 |publisher=[[大修館書店]] |date=2001-03 |isbn=978-4-469-01265-1 }}
== 関連項目 ==
* アレース(スキタイ)
* [[執金剛神|ヴァジュラバーニ]]
== 参照 ==
{{デフォルトソート:うるすらくな}}
[[Category:イラン神話]]
[[Category:ゾロアスター教]]
[[Category:ヤザタ]]
[[Category:軍神]]
[[Category:火星神]]